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認めるしかないだろ。 ページ14

公園を後にしたAは、
徐々に歩くペースを上げ、米花町の道を歩いていた。


(…何なのよ…)


苛立ちなのか。
悔しさなのか。
悲しみなのか。

不覚にも緩んだ涙腺に、気づかれてしまった。

そして、涙腺が緩んだことに、
涙を零してしまったことに驚いていたのは、自分自身の方だった。


様々な感情が入り混じった複雑な表情を浮かべ足早に歩くAだったが、
向こうから歩いてきた人物に、
とっさにそれを取り繕った。
こんな態度も、もうすっかり染み付いてしまったの、だろうか。



「…どうも」

『こんにちは…』

「お出かけ中、でしたか」

『…えぇ。まぁ。北川さんもお出かけですか?』


適当に会話を交わす相手は、
あの、北川だった。

張り付いたような何食わぬ顔で、
丁寧な口調で話しかけてくる北川に、Aは心底不快感を覚えた。


「…美人は得だな」

『…え…』


そして、急に口調を変え、
その態度も何やら一変した彼に、Aは眉をひそめた。


「うちの上役に、どうせ君が何か言ったんだろう?」

『…何の話ですか』

「…もう知ってるんだろう?Corsoの担当から外れたこと。
それに、その他の担当も白紙になったよ。
…美人の言うことは、大抵信じて貰えるだろうからな。
君は…うちで評判も良い人間だから、尚更だ。まぁ、どうせ、媚びでも売ったんだろうがな」


Aに対する態度のように、
他の取引先の女性にも似たようなことをしていた北川。

Corsoとの取引も然り、案件が滞るようなことが度々起これば、
その責めを負うことは必至だったのだが、
明確にその理由を伝えられなかった北川は、
明らかに逆恨みのような言葉をAに零した。
蔑むような目を向けながら。


自分がマズイことをしたと自覚しているようなセリフだと、
認識していないようだ。

そして、Aは、睨みつけていると言われてもおかしくない目つきで、
ハッキリ否定の言葉を口にした。


『…そんなこと、していません』

「…俺にニコニコ媚を売ってきた上、
そうやって手のひら返しとはな。女は本当に怖い…ってやつか」

『私は、何もお話していません。
北川さんに、媚を売ったなんて、それは勘違いです。』


ハッ、と、鼻で笑う仕草を見せた後、
北川は呟くような言葉を残し、Aが歩いてきた方向へ、
去っていった。

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設定タグ:名探偵コナン , 萩原研二 , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - なーこさん» またまた嬉しいコメントを頂きましてありがとうございます。どうにも回りくどく書いてしまう癖があるのですが、そう言って頂けて本当に嬉しいです。由紀さんの登場はRain執筆中からの計画でした (笑) 次回作は未定ですが、今後もご愛読頂けましたら幸いです。 (2019年12月20日 16時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*会社の為、隠忍自重する夢主が時折見せる弱さや脆さに萩原さんの言葉が染みて溢れ出すのを繊細に描いていたのが読んでいてじわっときました...。そして由紀ちゃんの登場は嬉しすぎるサプライズです!(笑)また次の作品も楽しみにしてます*。 (2019年12月20日 0時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月12日 17時

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