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桜_6 ページ11

強がっていることなど、
自分が一番分かっている。
北川のことも、
その他のことも、自分を押し込めてきたのは事実だ。
それでも、それが悪いことではないと、
そうすることで、物事は上手くいくのだと、
どこかで無理やり言い聞かせながら、良いように”大人”になっていった。


仕事に必要なこと以外、
言いたいことも、そして弱音もろくに口にすることができず、
彼氏だった康太にさえ、強がるようになっていた。


そして、
この男に、萩原に見透かされるように、
核心をついたような失礼な言葉を投げかけられ、
嫌でも気づいてしまった。
入社したての頃のように、自身の心に従うように、静かに抗った。

それでも、
もたらされる結果はやはり――。


芝生に座ったまま、手元に描いた桜を見つめ、
口を閉ざしたAの涙腺が、じわりと緩んだ。


そして、その横に立ったまま、
先ほどまで口を開いていた萩原だったが、
黙り込んだAを心配するように、ひょいとその顔を覗き込んだ。



「…あ…」


そして、目の前のAの頬に、
キラ、と光る雫が落ちたのを目にし、
眉をひそめ、その頬へ、そっと手を伸ばしかけた。

こういうところは、やはり無意識なのだろうか。


しかし、
泣きそうな、いや、もうすでに涙をこぼしてしまった自分に気づき、
パッと顔を背けたA。

宙に残された手をゆっくり戻す萩原は、
傷つけることを言ってしまったかと、口を開いたのだが――、


「…ご、ごめん。俺――」

「…あー!萩原さん!何やってるんですか!?」
「もしかして、またAお姉さんの絵、独り占めしてたの!?」
「もう!何やってんだよ!萩原の兄ちゃんとサッカーするの、楽しみにしてたんだぞ!」


向こうでサッカーをしていた子どもたちが駆け寄ってきたことで、
その声はいとも簡単にかき消された。


「萩原の兄ちゃん、絵描きの姉ちゃんと知り合いなのか?」
「え、そうなの!? あ…、Aお姉さん…、もしかして泣いてるの?」
「え!?あ、な、何かあったんですか!?」

萩原から見えないように顔を背けたAだったが、
ワイワイと周りに集まってきた子どもたちには見えてしまっている訳で。

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設定タグ:名探偵コナン , 萩原研二 , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - なーこさん» またまた嬉しいコメントを頂きましてありがとうございます。どうにも回りくどく書いてしまう癖があるのですが、そう言って頂けて本当に嬉しいです。由紀さんの登場はRain執筆中からの計画でした (笑) 次回作は未定ですが、今後もご愛読頂けましたら幸いです。 (2019年12月20日 16時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*会社の為、隠忍自重する夢主が時折見せる弱さや脆さに萩原さんの言葉が染みて溢れ出すのを繊細に描いていたのが読んでいてじわっときました...。そして由紀ちゃんの登場は嬉しすぎるサプライズです!(笑)また次の作品も楽しみにしてます*。 (2019年12月20日 0時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月12日 17時

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