立ち入り禁止 ページ8
最寄り駅である緑台駅を降りたAは、
電車内との気温差に身を固くした。
もうすぐ11月なのだ。
風が冷たいのは当たり前なのだが、
感じる不快感と悪寒はそのせいではないことを、
Aは十分理解していた。
『…』
もはやため息を零すことはなく空を仰ぐと、
そこに浮かぶのはもうすぐ満月になろうとしている、ふくよかな月。
普段よりも綺麗に見える月に、
寒くなると夜空が綺麗になるのよね、とぼんやり考えながら、自宅への道を歩くA。
(…まさか、この近くに住んでたり、しないわよね。)
取引先の人間が住んでいる場所など知らない。
どこで会うかも分からない。
緑台は、米花駅の隣にある駅だ。
自社、そして、A社とは3駅以上離れてはいるのだが、
先日のように、
米花町で、しかも、小さなBARでバッタリ出くわす可能性もあるのだ。
“社に戻らなければいけない”と、逃げる口実に口にした手前、
ここで見つかったら色々と面倒な訳で。
眉を寄せるAの目に、
何やら赤い光がチカチカと飛び込んできた。
そして、何か叫んでいるような誰かの声。
少し騒がしい気がする。
(…何かあった、とか…)
赤い光はAが歩く道の先から見えている。
それは、自宅方向を意味していて。
少し足早に歩いていくと、
周囲には2台のパトカーが止まっていた。
赤い光はパトカーの赤色灯だったようだ。
そして、周囲は何やら物々しい雰囲気で。
「夜分に申し訳ありません!現在不審物を確認中です!
念の為、付近の方は避難をお願いします!」
そう叫んでいるのは、
茶色いスーツと帽子を身にまとった中年くらいの男性。
そして、警察と思われる人たちが何名も集まっている。
(…不審物って…、そっち…私のマンションなんだけど…)
直ぐ目の先にマンションがあるのだが、
警察が立ちふさがるようにして市民の避難を呼びかけながら、
それ以上立ち入らせないように警戒している。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月29日 22時