Liar 【名探偵コナン】 (ページ39)

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面倒な男_2 ページ39

『今…は、難しければデスクに戻られてからご確認頂けますか？』

「え…」

『只今、送信させて頂きましたので。』

と言っても、ボイスレコーダーとは違う。
それに、言葉や文字など、
捉え方が違うなど、そういう意味じゃなかった、などと言われてしまえば、
反論の余地はない。
それでも、せめてもの抗議として、
時間を置かず、確認した事項を北川にメールしたA。
部長と、営業の部下数名にCcを入れて。

こうした状況では、当人同士だけのやりとりではトラブルの元だ。
何より、案件が進まないことは、Corsoにとっても損害になる。

『それでは、これで失礼いたします。
納期もありますので、なるべく早めにこちらからご連絡いたします』

「…分かりました。よろしくお願いします」

“よろしくお願いします”などと零す北川は、
そのように思っているとは到底見えず、Aは明らかな社交辞令的な笑みを向けると、
足早にA社を去った。

(…1つ1つの要望に合致する案をいくつか作って、
有無を言わせないように突きつけるのも1つの手だけど、
そんな余裕ある訳ないし…)

ふと見上げた東都タワーは、もうライトアップが始まっている。
15時半から始まった打ち合わせは、
あれやこれやと長引き、もう17時を回っていた。

(…もうバレンタインの飾りか…)

早いものだ。
また1月だというのに、
正月が過ぎればすぐにバレンタインの装飾が施される。
東都タワー周囲の店はキラキラとライトと、何やらハート型の装飾で飾り付けられていた。

そう言えば、
去年、クリスマスに康太と東都タワーに来たなと思い出すAだが、
その目に涙が浮かぶことは無かった。

(…好きだったはず、なんだけどなぁ…。)

仕事に追われる日々。
それだけじゃない。
自身を殺しながら、取引先と接する日々に、
色々なことを忘れていたのかもしれない。

少しだけ、
ほんの少しだけ、
何かを取り戻した気がしている今だが、
それでもやはり感じる大きな喪失感。

(…とりあえず、あの男をクリアしないと、ね)

何やら、ゲームの攻略のようなセリフを心に浮かべ、
ふっと真剣な目を携えると、Corsoに戻るため駅へと向かうAだった。