Liar 【名探偵コナン】 (ページ35)

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ストーカー_2 ページ35

一度大きく緩んだ涙腺は、そう簡単に元には戻ってくれない。
ポツリと反論するように、憎まれ口のような言葉を吐くと、
困ったような、心配そうな顔を向けてくる目の前の男に見られないように、
顔を背けて自宅への道を歩き出すA。

ここからは1駅だ。
歩いて30分少しで着く距離。

思考を整理するように、
こうして夜道を歩くのがAは好きだった。
特に、あれこれとモヤモヤしている時は。

『…』

溢れそうな涙を抑えるように、
きゅっとコートの襟を強く掴み、息を整えようとするAだったが、
目の端を光らせたままギロリ、と横に視線を向けた。

『…ストーカーで通報するわよ』

「だから…人聞き悪いこと言うなって。」

『何で付いてくるのよ』

「自分の家に帰ってるだけだけど。
…同じ方向なだけだろ。」

『…横を歩く必要ないでしょ』

Aは思い切り怪訝な顔を向けたが、
未だうっすらと滲んでいる涙を湛えた目では、
あまり説得力はなく。

こうして話していると、
奥歯を噛み締めていないと、
また溢れてきそうな涙を堪えるように、
諦めたように、口を閉ざしたA。
…1人にして欲しいのだが。

そして、同じく何も口を開くことなく隣を歩く萩原と、
結局、緑台近くまで来てしまった。

「じゃ、気をつけて帰れよ？」

『…』

チラリと視線を向けると、
さらりと右手を上げて、マンションのエントランスに入ろうとしている萩原の姿。

「…ん？送っていこうか？」

『…結構よ。』

5階、…いや、6階立てだろうか。
白っぽいマンションの中へと消える萩原の姿に、
無理やり自宅まで送ろうとした訳ではないのか、と、
Aはよく分からない表情を浮かべた。

Aのマンションまでは、あと数分の距離。
この辺りは比較的街灯も多く、帰宅する人などの人通りもある道だ。

泣いていることを指摘してきたり、
あのCafé Rainの店員も然り、楽しそうに女の子に声をかけていたり、
その上、子どもがいるのではないかという、何かと軽そうな印象のあの男。

萩原の良く分からない行動にため息をつきそうになったAだが、
まるで敢えて気にしないようにするかのように、
足早に自宅へと帰って行ったのだった。