じゃじゃ馬_4 ページ24
『貴方には関係ないでしょ。
悪いけど、放っておいて。』
「良く分からねぇけど、大事な取引相手だから、とか?
案件だとか大事な取引がどうとか、話してたしな。あの男。」
『…』
「あんまり自分を安売りすんのは――」
『人聞きの悪いこと言わないでくれる?
別に、取引のためにあの男と関係を持ってる訳じゃないわ。
…貴方のように、簡単に蹴飛ばせる相手じゃないだけよ。』
別に、良いようにされてる訳じゃない。
Noのサインは出している。
ただ――。
自分の弱さに反吐が出る。
良いように、”大人”になった自分に。
「へぇ。まぁ…、相当色々溜め込んでるように見えるけどな。」
『…自分がやりたい仕事を、…良い仕事をするためよ。
多少のストレスは、向上心や行動力を産むためには必要でしょ。』
自身に言い聞かせるように、
自身に言い訳をするように言葉を零すA。
そして、萩原の身体を両手で押しのけて、
彼には視線を合わせることなくその場から去ろうとする彼女に、
萩原が口を開いた。
「…君、嘘つきだな」
『...』
「あんまり溜め込んで自分を殺してっと―――」
『放っておいて。常に正直に生きられる歳でもないの。
子どもじゃないんだから。』
くるりと萩原に背を向け、
今度こそ自宅への道を歩き出すA。
(...何なの。ズカズカと踏み込んできて...。
...軽いだけかと思ったら、ホント...失礼な男。)
Aは顔を歪め、
苛立ちを隠さずに足早に歩を進める。
この店に足を運ぶことにした数時間前までは、
もし北川に会ったら、
もし、また触られるようなことがあったら、
今度こそ毅然とした態度で抵抗しようと決めていたのに。
例え、もし、取引関係にヒビが入ることになったとしても。
そんな風に、考えていたのに。
“もしかして、泣いてる?”
さっきの萩原の言葉が脳裏に浮かぶ。
(…泣く訳ないでしょ。…バカじゃないの。)
泣くほど悔しがることも出来ない自分に、
あの男の言葉に、
Aは、眉をひそめて強く目をつぶったのだった。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月29日 22時