7.時雨 ページ7
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「…あ、りがと」
北「…別に」
私がバランスを戻すと北斗はサッと腕を離し、駆け足で屋根がある自販機のところへ向かった。
気まずいけど、不運なことに私も自販機に用事があって来たので、後ろを着いて行く。
北斗とは別の自販機で、樹のりんごジュースと自分のオレンジジュースを買うことにした。
北「…そんな財布、持ってたっけ」
「、え?」
北「財布」
突然話し始めたから、まさか私にじゃないよねと思って周りを見渡すけど、あいにく私と北斗の姿しか見当たらない。
しかも振り向くと視線がばっちり合った。
え…私に言ったの?なんでいきなり?え、怖いんだけど。
「あ…これ?」
北「うん」
「これ、樹のだよ」
北「ふーん」
え、自分から聞いといてその反応?
…相変わらず何を考えているのか分からない。
きっと会話終了だろうと思って、自販機のボタンを押した。
ガコッと二つのジュースが落ちてきたから、かがんで取り出すと
北「…樹と付き合ってんの」
って、少し低めの声が聞こえたからまた振り向いたけど
でも今度は目が合わなくて、北斗は自販機にお金を入れ始めた。
「…なんでそんなこと聞くの?」
北「なんでもない。忘れて」
「忘れてって、」
北「遅れるぞ、大好きな数学」
時計を見ると、もう授業が始まる2分前。
北斗はピッと飲み物を買って、今にも止みそうな時雨の中を早歩きして行った。
胸が張り裂けそう。だけど後ろ姿を眺めても、この感情の答えなんか出なくて。
急に話しかけてきたことも、質問の意図も、そこまで好きじゃないはずのオレンジジュースを買っていた理由も
なにひとつ、分からないことだらけだった。
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くみ(プロフ) - 更新ありがとう御座います!拗らせ北斗くん大好きです!続き楽しみにお待ちしてます! (11月21日 13時) (レス) id: ac351487ee (このIDを非表示/違反報告)
まゆみん(プロフ) - 続き読みたいです。 (7月29日 16時) (レス) id: c9c9d458e3 (このIDを非表示/違反報告)
まゆみん(プロフ) - 早く結ばれてほしい、別れた理由知りたいです。 (2023年1月8日 16時) (レス) @page35 id: 541c7ab773 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:姫野 | 作成日時:2022年11月26日 22時