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連続通り魔事件_4 ページ9

『警察…?』

刑事か。
しかし、そう聞いても葵は警戒心を解くことはなく、
むしろ、少しの嫌悪感も交えながら、グラサンの男を見つめる。

嫌悪感というのは、葵の個人的な感情だ。
グラサンの男にすれば、全く身の覚えのない敵意を向けられていることになるのだが。

「通り魔。アンタも知ってるだろ。米花町とS町の事件。まぁ、巡回中、ってやつだ。
で、怪我は?」

『いえ、特には…。
大丈夫です』

「そりゃよかった。

あー。完全にのびてんな。アンタ、強ぇーんだな。」

口角を小さく上げて、男は葵にニヤッと笑いかける。

『いえ、職業柄、多少は備えておかないといけませんので…』

「職業柄?アンタも警察…じゃねぇーか。

…銃刀法違反の現行犯と、あとなんだ…まぁ、とりあえず、確保…っと。」

グラサンの刑事はぶつぶつ会話を続けながら、葵が未だ捻り上げている男の腕を掴んで手錠をかけ、
携帯を操作してどこかに連絡し始めた。

「あ、俺だ。澄川町の駅近くでナイフで女に襲い掛かった男を現行犯で取り押さえた。
パトカー頼む。」

『…警察じゃありません。
それと、事件のことは知っています。パトロールも強化されているようですしね。
でも、わざわざこの辺りまで巡回するんですね。刑事さんが。』

淡々とパトカーの要請を終えた刑事に、少し含みのある言い方で葵が答える。
葵の住む澄川町は、事件があった2つの地域からは少し離れている。
わざわざ刑事が一人で巡回するなんてことがあるのだろうかと、少しの猜疑心からの言葉だった。

「あー。ちょっと嘘ついた。悪りぃ。
帰り道なんだわ。俺も。
偶然。ついでというか…
まぁ、巡回っつった方が、警戒されねぇしカッコつくだろ」

フッっと息を漏らし、少しバツが悪そうな口調で話す男は、特別嘘をついているようには見えず、
葵もつられて少し表情を崩す。

『そう、ですか』

カッコつくって何…?、と思いつつ、
何だかよく分からないが、どうにも憎めない雰囲気があるなと葵は思った。

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作者名:white12 | 作成日時:2019年7月1日 21時

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