逃れられない想いとともに。(1)【松田陣平】 (ページ41)

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オフの時間ページ41

「皆さん、お疲れ様でした！かんぱーい！」

ザワザワと賑やかなダイニングバーで、茅野を始めとする事務所のメンバーが集い、ビールを掲げる。

茅野も白石も、本日裁判で勝利を収め、
また、葵の案件も一段落、ということで、打上げを兼ねて飲みに行こうということになったのである。

「それにしても、茅野先生、さすがでした。
あの切り返しは…

勉強になります！」

白石も何だか饒舌だ。
茅野への尊敬の念を惜しむ事なく言葉にして伝えている。

「結城さんも、凄かったんですよ！」

と、ビール2杯目にして酔いが回り始めたのかほんのり顔を赤らめた神山が割り込む。

「心理戦っていうか…
話の引き出し方とか、
面会時の、えっと…こちらの立ち位置を変えながら話を進めていって…

ほんと、凄かったんです！
さすがです、結城さん…!」

キラキラと何かが飛んできそうな眼差しで、葵を見つめる神山に、
葵は終始困った表情を浮かべている。

「さすがね、結城先生。
相手の心情を察しながら、話を聞き出す。
とっても大事な力よ。貴方も勉強になったでしょ、神山くん？」

神山は茅野からの見えないプレッシャーに「は、はい…」と小さくなっている。

まぁ、茅野先生の単なるお戯れ、なんだが。

『お水、頼もうか？』

葵の気遣いに、「結城さーん…」とさらに酔いが回ったように近づいてくる神山を、素早くシャットアウトするように後ろから引っ張る安田。
白石は相変わらず茅野を褒め称えている。