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弁護を担うもの_2 ページ37

隣の神山は眉をへの字に曲げたり眉間にしわをよせたりと、
ずいぶんと忙しそうだが。

『自白をしたのは、本心からですか?』

「…怖くなったんだよ。まだ、あの店長に仕返しできてねぇって思って、やってねぇって言い続けてたんだけど、
色々聞かれるうちに、あぁ、もうバレるんだろうなって思って。
ナイフで怪我させちまったときの手の感触も残ってて。どんどん怖くなってきて…」

『…そうですか。
でも、一転して、やっぱり、と自白を覆した。』

「…強要されたんじゃないか、って聞かれて…。もしそうなら、警察側の問題で、無罪というだけでなく警察を訴えることもできるって…」

葵は、なんとなく想像してはいたものの、ふぅ…とため息をつく。
『飯野弁護士に、ですか』

おおかた、飯野弁護士が、冤罪や自白の強要を主張して無罪を勝ち取るために、
木本にうまいこと言ったのだろう。
弁護をする上で、無罪を主張したり、刑期を出来るだけ軽くしようと、
そのように促す弁護士がいる事実には、葵は憤りや悲しさを交えた複雑な感情を常に抱いていた。
弁護とは、弁護士の存在意義とはいったいなんなのか。
そもそも、訴訟に対して「勝ち負け」の言葉が使われること自体も、葵は好ましく思っていなかった。

『私の名前を雑誌でみたと言っていましたね』

「あのコンビニで売ってる雑誌だ。前に、冤罪を扱った記事が載ってたのを覚えてて…
あの飯野ってやつが引き受けるって言ってたけど、なんか、あいつ、苦手だったんだ…。」

飯野は、強引に木本に、あれこれと進言していたのかもしれないな。
事務所で対話した際に、やたらオーバーな表情をしていた飯野を思い出す。

もう、ある程度話を聞き終えたか。
およその経緯はつかめた。

あとは、もう一度きちんと刑事あるいは検事に取り調べて貰い、調書を作成し直して貰うことになるな。

そう判断した葵は、ゆっくりと椅子をたち木本に声をかける。

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作者名:white12 | 作成日時:2019年7月1日 21時

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