被疑者との面会_1 ページ15
腕時計に目を落とすと、
ちょうど12時になったところだった。
近くのコーヒーショップで軽く食事を済ませてから、留置所近くの待ち合わせ場所に向かうと、
紙コップを持ちつつ、左手の書類に目を通す神山の姿が見えた。
『ごめん、もう来てたんだ』
約束の12時45分より数分早く到着したものの、葵は小走りに駆けつける。
先日のようにヘラっと言い訳をすることもあるが、神山はなんだかんだで時間には真面目な奴だと、葵は信頼している。
「あ、お疲れ様です!」
神山は、書類から目をあげると開口一番に、
「どうでした?事情聴取」
と聞いてくる。
『どうって…、昨夜のこと、色々聞かれてありのままを答えただけよ。
じゃ、行きましょ』
別に大したことじゃないでしょ、と言わんばかりに軽くあしらって、
留置場へ向かう。
『神山くん、留置場での被疑者との面会経験は?』
「えっと、一回だけです」
葵の問いに、少し緊張した様子で応える神山。
『そう…。今日の木本との面会では、あくまで第三者的な中立の立場を貫いて。弁護士だから、味方だから、というような態度は決して出さないで。出来れば、今日はあまり口を出さないで貰えると助かる』
葵は厳しい目つきになって、神山に伝える。
「えっと…」
仕事のときの葵は、厳しい空気を纏う。
共に仕事をしてきた神山は、それを良く分かっている。
葵の言うことは、確かに正しい。
まだ、被疑者の主張を含めて情報が少ない段階で、しかも弁護をするかどうかも決まっていない。
相手がどんな人物かも分かっていない状況で、下手に感情を出すことは避けるべきだ。
被疑者との面会経験の少ない自分は、今日は単純にアシスタントとして口を挟まずにいようと、
神山は強く思った。
『あ、でも、彼の言う話はしっかりメモ取っておいてね。よろしく。』
と軽く微笑む葵に、
神山は少しだけ緊張の糸を解きつつも、すっと背筋を伸ばしながら歩を進めた。
留置場につくと、受付であらかじめ伝えていた事情を話し、
面会室に向かう。
『神山くん、とりあえず、名刺、用意しておいて』
「了解です。結城さん。」
アクリル板越しに、2人分の名刺を立てかけると、
ちょうど、警官に連れられて男が入ってきた。
木本だ。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年7月1日 21時