茅野法律事務所_2 ページ2
「確か、今日は午後にクライアントがくるんでしたよね?」
「あぁ、葵さんご指名の…!」
『はい。14時に来られる予定です。』
「わざわざ指名とは、どんな案件なんでしょうね…。厄介な案件じゃないといいですが」
白石は、コートをハンガーに掛けながら、こちらに軽く苦笑いを向ける。
確かに指名される覚えがない以上、嫌な予感がしないでもない葵は、同じく、白石に苦笑いで応えた。
「皆、おはよう。今日はなんだかあったかいわねぇ」
「「おはようございます。」」
「おはようございます!」
この事務所の所長である茅野雪絵が、通勤途中で脱いだのだろう、ジャケットを片手に入ってくる。
「今日は午後から打ち合わせで出かけるから。悪いけど、クライアントの対応、念のため白石くんも確認お願いね。」
「分かりました」
「あ、それから、神山くんはまだ…か」
『そうですね。いつもならそろそろ来る頃かと…。』
神山柊二は、葵より1つ年下のパラリーガルだ。
司法試験合格を目指しつつ、茅野法律事務所で様々な案件のアシスタントをこなしている。
チラッと時計に目をやりながら、
「まさか、遅刻…なーんてことは…」
と、ニヤッと安田が笑う。
こういう茶目っ気も彼女の愛らしさの一つだ。
「それなら、次の休みはなしということになるわね」
「ですね」
そこに乗っかる茅野と白石。
なんとも賑やかな事務所だと、
葵は穏やかな表情になる。
「おはようございますー!」
と、そこに小走りに登場したのは噂の神山。
「あ、残念 (笑)」
意地悪な笑みのまま、神山に微笑みかける安田に、状況がわからない様子の神山はきょとんとする。
「なんだか最近自転車の調子が悪くって漕ぎづらいんですよね、参りましたよ…」
「単なる寝坊じゃないのか」
言い訳がましく呟く神山に、白石がぼそりと突っ込む姿もすっかりこの事務所の日常といったところだ。
電車通勤の他の4人に対して、実際、神山は4駅先の自宅から自転車で通っている。
なかなかの長距離ではあるが、本人曰く良い運動で気に入っているらしい。
まぁ、自転車の調子がおかしいのが本当かどうかは、定かではないが。
茅野法律事務所に勤務するのは、3人の弁護士を含むこの5人。
小規模でアットホームなこの事務所が葵はとても気に入っており、
何より自分の信条に理解を示してくれる茅野のことを信頼していた。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年7月1日 21時