ホイップ増量で。【不死川実弥】

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「お待たせしました」
「……これ」
「よかったら食べて下さい、余らせちゃうの勿体無いので」



目の前に置かれたケーキにギョッとする先輩だったが、よっぽど甘いのが好きなのかすぐに目を輝かす先輩。ありがとな、といつもは「…っス。」しか言わない彼が小さく笑うものだから、なんだか恥ずかしい。

それを誤魔化すようにレポートですか、とパソコンを覗き込めば見たことないような数式が羅列していた。


「……何語ですか」
「…選択で数学とってんだァ」


数学とは高校卒業と共に縁を切ってきた私と、選択で自ら数学をとる不死川先輩。同じ人間でもこうも違うのかと思った。


「すごいですね」
「…別に、んなことない。」


照れているのか、ミルクティーを一気に飲むも熱っと咳き込む先輩…なんか可愛い、と思わずクスッと笑ってしまったがどうやら先輩には気づかれてないみたい。


「レポート頑張ってください」


落ち着いた先輩にそう一言言い戻ろうとした時、私の右手首を先輩は掴んだ。


「…ありがと、木下も、頑張れ」




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「Aちゃん大丈夫？」
「大丈夫よ？」




バイトが終わり、駅までの道をいつも通り歩いていれば心配そうに私の顔を覗き込む蜜璃ちゃん。わけが分からず首を傾げていれば、先輩にケーキを渡して戻ってきてからすごくボーッとしていて心配だと。

…確かにお皿は落として割るし彼女が心配する気持ちもわからなくもない。





「…ありがと、木下も、頑張れ」




＿＿＿衝撃的だった。


急に掴まれた右手首と簡単ながらも私を思っての言葉。どこぞの少女漫画のような展開に不覚にもドキッとしてしまった。思い出しただけで、自分からボフッと湯気が出そうだ。頭を左右にブンブンと振って邪念を振り払うが、その姿にさらに心配そうに見つめる蜜璃ちゃん。


「大丈夫、本当に大丈夫」
「な、ならいいんだけど」


若干引き気味？の蜜璃ちゃんにそう言えば、視野の端っこに見えるコンビニの幟。そこにはチキン100円セール。

この前は肉まんで、今日はチキン。

私たちは顔を見合わせてニコッと笑いあえば、彗星の如くコンビニへ。熱々のチキンを頬張りながら歩く帰り道、単純な私はすっかりさっきの事を忘れた。

…でも、右手首に残る先輩の体温だけは忘れることは出来なかった。

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