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クリスマスの夜が明けてすぐ、宇髄天元はバイクを走らせていた。昨日、降っていた雪は一瞬で積もることはなく、イルミネーションなどの片付けが進む街にはいつも通りの日常に戻ろうとしていた。突き当たりの角を右に周れば、見慣れた友人のアパートが。バイクを止めて、キーをクルクル回しながら宇髄はインターホンに手を伸ばした。
「おい、不死川開けろ」
いるんだろう、と扉をガンガンと拳で音を立ててれば、中からドタバタと慌ただしい足音が聞こえ、その直後に白銀の髪がピョンピョンと跳ねた寝癖頭の不死川がいかにも機嫌が悪そうに宇髄を睨みつけた。
なんだよォ、という不死川を無視して遠慮もクソもなく不死川の部屋に上がった宇髄。それを特に咎めないのは、これが初めてではなくいつも宇髄はこうだからだ。
「あれ、てっきりAちゃんいるのかと思ったが」
宇髄は、部屋の斜っているローテーブル上に転がる数本の空き缶と、不死川の目の下に出来た隈、少し青白い顔色で頭を押さえる素振りから何かあったと悟った。
「いねェよ。」
「何、まさかフラれたとか?」
「……チキっていえなかったァ」
「はあッ?!」
魂が抜けたような不死川の目の色は消えて、ベッドに力なく座り込んだ。ベッドの脇には昨夜、Aから贈られたマフラーが丁寧に畳まれてあった。それを見る不死川は、悲痛な表情を浮かべ肩を落とした。そんな彼の頭上からあまりにも急に発せられた言葉によって、不死川の心臓は止まりかけた。
「言えなかったとか、お前それでも男か!?玉ついてねぇだろッ!!!」
「あァ!?ついとるわ!見せてやらァ!!?」
「気っっ持ち悪りぃな見せなくていいわ!!」
「宇髄がついてないとか言うからだろうがァ!!」
「誰が野郎のなんて見たいんだよバカがッ!!」
互いがゼイゼイと息を荒げ、枕やらクッションやらを持つ。彼らの諍いを止めたのは、隣室からドンッという壁を叩く音だった。その後も宇髄は、腹の虫が治らないのか小声で「まじないわー」や「くそ不死川」など執拗に愚痴を溢していた。しかし何も憎まれ口が帰ってこないと、宇髄は不審に思い不死川を見れば今にでも泣き出しそうな顔で、テーブルに突っ伏していた。これは重症だと感じた宇髄は、「悪りぃ悪りぃ、クレープ行こうぜ不死川」と彼を無理矢理立たせたのだった。
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三月の専属ストーカーなつめみく - 宇随さんの小説でホイップ増量でェってセリフがリンクになってたから飛んでみたらいきなりさねみんがホイップ増量でェとか言ってて吹いた。 (10月25日 16時) (レス) id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - にじさん» にじさん初めまして、コメントありがとうございます!実弥さんらしさがなかったら…と不安でしたし、皆さんが想像しやすいように描写の方も力を入れているのでそう言って頂けて嬉しいです、ありがとうございます( ; ; )今後も頑張りますのでよろしくお願いします…! (2021年2月21日 23時) (レス) id: e728655408 (このIDを非表示/違反報告)
にじ(プロフ) - コメント失礼します。蓮さんが書く実弥さんとても好きです…。こんな恋がしてみたい!ときゅんきゅんしてます…!描写も一つ一つが丁寧でとっても素敵で…これからもコッソリと更新を楽しみにさせて頂きますね。 (2021年2月21日 17時) (レス) id: 7dcf5a18d1 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - パチ麻呂さん» パチ麻呂さん初めまして、コメントありがとうございます!実弥さんとの恋を楽しんで頂いてるみたいで私も嬉しい限りです!労いのお言葉までありがとうございます…!甘くしていけるよう努力してまいりますので今後もお付き合い頂ければ幸いです。よろしくお願いします! (2021年2月19日 22時) (レス) id: e728655408 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - コメント失礼します。文章1つ1つが可愛らしいというか、恋してる気持ちになれて堪りません( ; ; )スマホ片手にジタバタしちゃうくらいキュンキュンします。これからも楽しみにしています。お体に気をつけて蓮さんのペースで更新頑張ってください! (2021年2月19日 5時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蓮 | 作成日時:2021年1月26日 21時