34 ページ35
*
私たちは結局、アヒージョやハンバーグ、クリスマス限定メニューであるトマトやクリームチーズ、アボカドを使ったカナッペなどを注文し、お洒落なノンアルコールのドリンク片手に日々の会話や眼前のイルミネーションを楽しんでいた。
「木下、これ」
「ありがとう、ございますっ…!」
先輩が徐に私に手渡したのは、なんだか見覚えのあるワインレッドを基調としゴールドでアーガイルの模様が施されたラッピングの袋。リボンを解き中の物を取り出してみれば私は酷く驚愕してしまい、開いてしまった口の前に手を添えた。
「どうしたァ」
「…わたし、も…その、」
酷く驚く私を見る先輩の表情にも、だんだんと不安の色が濃くなっていく。用意していた先輩へのプレゼントを彼に渡し、「中見て下さい」と言えば察したのか素早く開封した先輩の顔は青ざめていった。
「…被ったァ」
全く同じブランドのマフラーが2つ。色まで同じで淡いベージュのものだった。肩をがっくりと落とす先輩は、「悪りィ」と零すも私は可笑しくて笑ってしまった。
「こんなことあるんですね」
「……そうだなァ」
ぶはっと吹き出して笑う先輩は、「お揃いかァ」とチラッと私を横目で見て微かに口角を吊り上げた。そんな彼を見ていれば、恥ずかしくてどうにかなってしまうんじゃないかと思うが、お揃いという言葉の響きが心地良く、私も先輩のように笑わずにはいられなかった。
「大切に、します」
「俺も。」
私と彼の双眼が交わり、互いの瞳に映る私たちは赤い頬で言葉を交わす。含羞が込み上げながらも、彼の目を逸らしたくない、ずっとこのまま見ていたい、この時間がずっと続けばいいともう少しで幕を閉じる聖なる夜に祈る。
「……木下、少し歩かないかァ」
緊張した面持ちで言う先輩。「…はい」と震えて掠れた私の声を聞いた先輩はありがとな、と私の頭に手を乗せた。
店を後にした私たちは、どちらからともなく指を絡ませて、ただただ夜の闇の中を進む。まだ多くの男女の笑顔が咲き乱れる並木道だが、不思議と私と先輩以外の音という音が奪われて、まるで2人だけの空間のように感じられる。
全て、何もかも、聞こえてしまうんじゃないかと思うぐらい静かな世界で、最初に口を開いたのは不死川先輩だった。
550人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
三月の専属ストーカーなつめみく - 宇随さんの小説でホイップ増量でェってセリフがリンクになってたから飛んでみたらいきなりさねみんがホイップ増量でェとか言ってて吹いた。 (10月25日 16時) (レス) id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - にじさん» にじさん初めまして、コメントありがとうございます!実弥さんらしさがなかったら…と不安でしたし、皆さんが想像しやすいように描写の方も力を入れているのでそう言って頂けて嬉しいです、ありがとうございます( ; ; )今後も頑張りますのでよろしくお願いします…! (2021年2月21日 23時) (レス) id: e728655408 (このIDを非表示/違反報告)
にじ(プロフ) - コメント失礼します。蓮さんが書く実弥さんとても好きです…。こんな恋がしてみたい!ときゅんきゅんしてます…!描写も一つ一つが丁寧でとっても素敵で…これからもコッソリと更新を楽しみにさせて頂きますね。 (2021年2月21日 17時) (レス) id: 7dcf5a18d1 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - パチ麻呂さん» パチ麻呂さん初めまして、コメントありがとうございます!実弥さんとの恋を楽しんで頂いてるみたいで私も嬉しい限りです!労いのお言葉までありがとうございます…!甘くしていけるよう努力してまいりますので今後もお付き合い頂ければ幸いです。よろしくお願いします! (2021年2月19日 22時) (レス) id: e728655408 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - コメント失礼します。文章1つ1つが可愛らしいというか、恋してる気持ちになれて堪りません( ; ; )スマホ片手にジタバタしちゃうくらいキュンキュンします。これからも楽しみにしています。お体に気をつけて蓮さんのペースで更新頑張ってください! (2021年2月19日 5時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:蓮 | 作成日時:2021年1月26日 21時