検索窓
今日:50 hit、昨日:9 hit、合計:159,493 hit

29 ページ30

*







「Aちゃんお待たせ!」


遅くなってごめんなさい、と両手を顔の前で合わせる蜜璃ちゃんは、私の隣に座った。私たちのバイト先の最寄り駅に隣接しているファストフード店で大学終わり、私たちは待ち合わせた。



「相談ってどうしたの?」


いつもの愛らしい笑顔ではなく、眉を八の字に曲げて私の顔を覗き込む。その上品な翡翠の眸子には不安の色が見えた。


…相談というのは言うまでもなく、不死川先輩のことだった。





「…あのね。」


私は、今抱えている先輩への気持ちを1つ1つ紡いだ。


不死川先輩のことが好きなこと。でも前の恋のこともあるせいか、なかなか前向きになれないこと。クリスマスに彼からお誘いがあったこと。洗いざらい話し彼女が何と言うか、俯きがちに待っていれば、Aちゃんと彼女の可愛らしい声が聞こえた。



「苦しかったわよね」



気づいてあげられなくてごめんなさい、と蜜璃ちゃんは私を思いっきり抱きしめた。急な事態に言葉を失いかけたが、彼女の優しさにぽたりと涙が溢れた。


彼のこと、不死川先輩のことは勿論好きだ。だけど、突然のことに追いつかなくて、嬉しかったけど戸惑いの方が大きかった。



どうして誘ってくれたのか。

私と同じ気持ちということなのか。

期待していいのだろうか。

前みたいに上手くいかないんじゃないか。



お誘いを頂いてからの3日間。いろんなことを考えては一喜一憂し、大袈裟かもしれないが食事も喉を通らないとはこのことかと言うぐらいに、悩んでしまっていた。

そんな私の心情を悟り、「大丈夫よ。」と背中を摩り続けてくれる蜜璃ちゃんの優しさは、返って涙を生んだ。周りに他のお客さんがいて、羞恥心が湧き上がるもこんなにも自分を思ってくれている友達がいることに、私はこの上ない喜びを感じた。


…泣き止んだ頃には、頼んだポテトは冷え切っていてしんなりとしていた。不味い、と2人で笑いながらこれまた氷が溶けて薄くなったジュースを口にした。


「Aちゃんはもっと自信を持っていいと思うわ」
「蜜璃ちゃん、…ありがとう。」
「突然のことでびっくりする気持ちもわかるけど、好きって気持ちは誤魔化せないと思うの」


だから、と私の両手に自分の両手を絡めた蜜璃ちゃんは「自信を持って伝えるべきよ!」と屈託のない、けれどどこか力強い瞳で笑った。その笑顔に後押しされた私は、蜜璃ちゃんのためにも精一杯やり遂げようと意気込み頭を縦に振った。

30→←28



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (271 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
550人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 不死川実弥   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

三月の専属ストーカーなつめみく - 宇随さんの小説でホイップ増量でェってセリフがリンクになってたから飛んでみたらいきなりさねみんがホイップ増量でェとか言ってて吹いた。 (10月25日 16時) (レス) id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - にじさん» にじさん初めまして、コメントありがとうございます!実弥さんらしさがなかったら…と不安でしたし、皆さんが想像しやすいように描写の方も力を入れているのでそう言って頂けて嬉しいです、ありがとうございます( ; ; )今後も頑張りますのでよろしくお願いします…! (2021年2月21日 23時) (レス) id: e728655408 (このIDを非表示/違反報告)
にじ(プロフ) - コメント失礼します。蓮さんが書く実弥さんとても好きです…。こんな恋がしてみたい!ときゅんきゅんしてます…!描写も一つ一つが丁寧でとっても素敵で…これからもコッソリと更新を楽しみにさせて頂きますね。 (2021年2月21日 17時) (レス) id: 7dcf5a18d1 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - パチ麻呂さん» パチ麻呂さん初めまして、コメントありがとうございます!実弥さんとの恋を楽しんで頂いてるみたいで私も嬉しい限りです!労いのお言葉までありがとうございます…!甘くしていけるよう努力してまいりますので今後もお付き合い頂ければ幸いです。よろしくお願いします! (2021年2月19日 22時) (レス) id: e728655408 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - コメント失礼します。文章1つ1つが可愛らしいというか、恋してる気持ちになれて堪りません( ; ; )スマホ片手にジタバタしちゃうくらいキュンキュンします。これからも楽しみにしています。お体に気をつけて蓮さんのペースで更新頑張ってください! (2021年2月19日 5時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2021年1月26日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。