ホイップ増量で。【不死川実弥】

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「乾杯」



いちごのチューハイとオレンジジュース。それぞれを手にした私たちは、グツグツという音と食欲をそそる香りを囲んでグラスを鳴らした。完成したトマトチーズ鍋。取り分ける度に伸びるチーズが堪らなく、またトマトの酸味とチーズのコクが煮込まれた食材たちの旨みをさらに増していく。



「ッ〜、…あっちィ」
「大丈夫ですか」



熱々のソーセージを口にした先輩は顔を顰めた。プリップリの皮付きソーセージを1口頬張れば、中から溢れてくる肉汁は勿論熱いわけで。よっぽどお腹が空いていたのか、熱いと言いながらもガツガツと食べ進める姿というのは、どこか可愛らしくて、ふふっと小さく笑ってしまいばれてなければいいなと思ったが、食べるのに夢中で彼は気づいていなかった。



「食え食えェ」
「ありがとうございます」



先輩は食べつつも食材を追加してさらに、私の取り皿にも入れている。鍋奉行、いや、世話焼きの方が性に合っているのか、先輩の姿はまるでいっぱい食べろ、と微笑む親や長子のようだ。



「先輩って、ご兄弟とかいるんですか？」
「あ？んだ急に」



不意をつかれたような表情の先輩だったが、すぐにその顔は優しくて温かみのある表情へと変わっていった。



「下に6人いる」
「6人？」
「1番ちびはまだ小学生」
「…納得です」



何が、という風な顔でこちらを見てくるが気にせず食べ進める先輩は、木下は兄弟いるのか、と聞き返してきた。




「異常に過保護すぎる兄が1人います」
「……あー、なんか、そんな感じするわ」




まぁ、でも、わからなくもねェな、と1度食べるのを止め、頬杖をつきながら私を見て言う先輩。


…それは兄目線として、言っているのか。


自分本意の考えだと、それはつい、過保護になりすぎるほど大切っていうことなのか。



「お兄ちゃん、みたいですね」
「……兄ちゃん、かァ」



物憂げな面持ちで、兄ちゃんと言う言葉を繰り返した先輩は、いちごのチューハイをクイっと飲み干して、さっさと食えほら、と先ほどと同様に取り分けてくれた。

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