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「悪りィ」
荷物取ってくるからと1度、校内に消えた先輩はすぐに帰ってきた。
…今日の彼もやっぱりかっこいい。
くすみブルーのボアジャケットに、淡いベージュのタックワイドパンツとトートバッグを肩からかけるその姿。左耳の控えめな小さいシルバーのリングのピアスが、アクセントになっていて、それはその綺麗な首筋を引き立てる。
「いえ」
「……行く、かァ」
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こっち、と急に手を引かれれば前から自転車が1台。自然と彼の背後に守られるような形となる。そのまま車道側に立つ彼。
「…鍋、しね?」
ちらっとこちらを見る先輩はすぐに前を向く。はい、なんてそっけない返事しか出来ない私にも、おォって嬉しそうに少し頬を綻ばせる。
小さなことかもしれない、人によってはどうってことないかもしれない。いちいち反応しちゃってバカなんじゃないかって、罵倒されてしまっても構わない。些細なところも気遣ってくれる優しい彼。1つ1つの彼の行動が、切なくて苦しくて、でもそれが堪らなく嬉しくて。胸がキュッと音を立てながらも、込み上げてくる彼への想いがまた1つ、積み上げられていく。
「なんだァ」
「…なんでも」
綺麗な横顔に見惚れていれば、それに気づいた彼は赤く頬を染めて、前髪を撫でる。照れると髪を触る、きっと彼の癖。
「…何の鍋が好きだ」
「実家だとキムチ鍋よくします」
「…………悪りィ、他のでいいか。」
辛いのちょっと、な。俯きがちに恥ずかしいのか、目が泳ぐ彼。強面なのに、甘党で、辛いのが苦手って。それで好きな食べ物はハンバーグって何それ。かわいい、とでかかった言葉を必死に堪えて、でも代わりに我慢できずに笑ってしまった私にまた彼は、笑うなってこの前みたいにコツンと拳を1つ。
貴方が隣にいて、柔らかくて温かい笑顔が、今は私だけに向けられて、貴方の色に染まっていく私。どうして誘ってくれたの?宇髄先輩じゃなくて私にした理由は何?
___私、先輩が思うほど、鈍感じゃないよ。
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三月の専属ストーカーなつめみく - 宇随さんの小説でホイップ増量でェってセリフがリンクになってたから飛んでみたらいきなりさねみんがホイップ増量でェとか言ってて吹いた。 (10月25日 16時) (レス) id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - にじさん» にじさん初めまして、コメントありがとうございます!実弥さんらしさがなかったら…と不安でしたし、皆さんが想像しやすいように描写の方も力を入れているのでそう言って頂けて嬉しいです、ありがとうございます( ; ; )今後も頑張りますのでよろしくお願いします…! (2021年2月21日 23時) (レス) id: e728655408 (このIDを非表示/違反報告)
にじ(プロフ) - コメント失礼します。蓮さんが書く実弥さんとても好きです…。こんな恋がしてみたい!ときゅんきゅんしてます…!描写も一つ一つが丁寧でとっても素敵で…これからもコッソリと更新を楽しみにさせて頂きますね。 (2021年2月21日 17時) (レス) id: 7dcf5a18d1 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - パチ麻呂さん» パチ麻呂さん初めまして、コメントありがとうございます!実弥さんとの恋を楽しんで頂いてるみたいで私も嬉しい限りです!労いのお言葉までありがとうございます…!甘くしていけるよう努力してまいりますので今後もお付き合い頂ければ幸いです。よろしくお願いします! (2021年2月19日 22時) (レス) id: e728655408 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - コメント失礼します。文章1つ1つが可愛らしいというか、恋してる気持ちになれて堪りません( ; ; )スマホ片手にジタバタしちゃうくらいキュンキュンします。これからも楽しみにしています。お体に気をつけて蓮さんのペースで更新頑張ってください! (2021年2月19日 5時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蓮 | 作成日時:2021年1月26日 21時