41:懐かしい顔 ページ41
*
「Aちゃん、そろそろ上がっていいわよ」
「はい、あとこれ少し補充しときますね」
「ありがとう、ホントAちゃん来てくれて助かってるわ」
「いえ、そんな…」
逃げるように地元に帰ってきてから、一度もソウルには行っていない。
あの店もすぐに手放してしまった。
都会に憧れて、父の少しの遺産で持った念願の店だったけど、
やっぱり私には田舎暮らしが合ってる。
紙ナプキンの補充を終えて、立ち上って店の奥に戻ろうとしたタイミングで、
来客を知らせる入り口のベルに顔を向けた。
「いらっしゃいま…」
「こんばんは」
「…ジョンス…」
変わらない笑顔でドアから覗く懐かしい顔。
「まだ営業してる？」
「え？あ、はい、どうぞ」
「ありがと。じゃあいつものね？」
いつもの…
まるで昨日も会ったような、その自然な話しぶりに少し戸惑う。
「あら、Aちゃんの知り合い？また随分イケメンだこと。彼氏？」
「え？ち、違います！おばさん、やめてください」
「はは、ありがとうございます。でも僕、振られちゃったんですよ」
「あらやだ、ごめんなさい？
でもこんなイケメン振るなんてAちゃん贅沢ものね(笑)
もういいからAちゃんもそこ座って？おばさんが持って行くから」
「え？す、すみません…」
仕方なく、店の一番奥のテーブルにジョンスを通し私も向かい側に腰掛けた。
間もなくして暖かい湯気の上がるアメリカーノと私がいつも飲んでいる
ハーブティーが運ばれてきて、おばさんは気を利かせて店をクローズにしてくれた。
少しの沈黙。
こうして向かい合うと、忘れたいと願ってきた数ヶ月前の事が一気に蘇る。
「久しぶりだね」
「…ジョンス、さん」
「いいよ、ジョンスで。それより…どうしていなくなったの？」
「……」
そんなこと…決まってる。
「俺とﾄﾞﾝﾍ、どちらも選べなかったってこと？」
「……」
「違うよね？君は最初からどちらが好きかなんて決まってたんだろ？」
膝の上に置いた手をぎゅっと握る。
「ごめんなさい…」
「謝らないでよ。なんか、切なくなるからさ。それより…ずっと探してたよ。あいつ」
「……」
「もしかして俺に遠慮してる？」
「そんなんじゃ…」
「優しいのはいいことだけど…もっと自分勝手に生きていいんじゃないかな？」
あの日、ジョンスは私を置いて去り際にこう言った。
(素直になれ)と。
でも…私はどうしてもそれができなかった。
*
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りゅう(プロフ) - さくらこさん、ステキなお話をありがとうございました♪ブラックドンヘ？？と思いながら読み始めましたが、ステキなラスト♪ほんまにさくらこさんのドンヘをはじめとするメンバーへの愛が溢れてました♪またお話楽しみにしてます♪暑いからお身体ご自愛くださいませ♪♪ (2015年8月7日 15時) (
レス) id: 8614525c3d (このIDを非表示/違反報告)
さくらこ(プロフ) - ちかさん» ちかさん、コメントありがとうございますm(_ _)mトゥギもドンヘも実際どんな感じなんだろう…妄想の中だけでも、こういう人なんだと思いたいですよね〜。これからもたのしんでいただけるように頑張ります！ (2015年8月1日 11時) (レス) id: c51219206a (このIDを非表示/違反報告)
さくらこ(プロフ) - よぅちゃんさん» よぅちゃん、コメントありがとうございますm(_ _)mコメント欄がトゥギを偲ぶコメントで溢れて…いつかちゃんとトゥギも幸せにしてあげなきゃね^^; (2015年8月1日 11時) (レス) id: c51219206a (このIDを非表示/違反報告)
さくらこ(プロフ) - さるるんさん» さるるんさん、コメントありがとうございます！お、さるるんさんのお話読ませていただいてますよ！嬉しいいです！ (2015年8月1日 11時) (レス) id: c51219206a (このIDを非表示/違反報告)
さくらこ(プロフ) - まゆまゆさん» まゆまゆさん、コメントありがとうございます！レス遅くなってごめんなさいm(_ _)mトゥギは私のお話の中でいつもこういう役回りなのでちゃんと幸せにしてあげないといけないですよねwwいつかトゥギも書けるかな^^; (2015年8月1日 11時) (レス) id: c51219206a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さくらこ
| 作者ホームページ：http://id41.fm-p.jp/390/cherryhae15/
作成日時：2015年5月26日 15時
