【A3!】彼女の攻略、ハードモード 2nd【摂津万里】

摂津家 ページ7

ASIDE

『おぉ〜いい湯〜』


ざぶん、と浴槽に浸かって、手足を伸ばす。

摂津家は居心地がいい。摂津家の人が、皆良い人だから。

大黒柱のパパさん。

大手企業のサラリーマン。割と上のほうの役職に就いているらしい。
あまり表情に出るタイプではないが、いつも穏やかで、意外とノリがいい。


摂津家の癒し、ママさん。

週に数日、個人経営の雑貨屋さんで勤務している。自身も手先が器用で、私にもハンドメイドのアクセサリーをくれたりする。ちょっと天然だけどそこがまた可愛い、優しい人。


長女の志帆さん。

見た目はちょっとヤンキーっぽいというか、怖い雰囲気あるけど、予想に反して家事を完璧にこなす。スポーツ万能、勉強は苦手らしい。気の合う楽しい人だ。


『摂津家長男の万里も、何だかんだ家族には素直だしなぁ』


言葉遣いは粗いけど、[おかえり]とか[さんきゅ]とか、挨拶や返事はしっかりしてるよね。
反抗期によくある、[うっせーよババア！]みたいな様子は見たことがない。

志帆さんによれば、高校に入って暫くはそういうことも多かったらしい。
高1の冬くらいから、じわじわと減っていったと。


『…高1の冬って、万里にとっての転換期なのか？』


確か、前に万里の話をした時、三角くんも言い当ててたよね。万里が女遊びをやめたのは、高1の冬頃じゃなかったかって。


『私に関係ないところで、何かあったのかな』


…うわ、今、胸の奥辺りがチクッてした。


『私の知らない万里がいるのは嫌だなぁ、ってか？』


これは、そろそろ認めなくてはなりませんな。いづみさーーーん！

―

万里SIDE

「っだー！うぜぇ！」

「だからー、さっさと告白しなさいって！」

「俺達は、いつになったらAちゃんを彼女として紹介してもらえるのか、ってワクワクしてるんだぞ？」

「ふふ、楽しみねえ。孫の顔を見れる日も近いかしら」


Aが風呂に入っている間、俺は毎回、似たような質問と謎の恋の手引き(？)を家族から受ける、という苦行を強いられている。


「待って母さん、その前に私が結婚するからね！」

「そうだよ、姉貴、今の彼氏と結構長いだろ！」

「勿論、志帆にも期待してるわよ」

「まずは万里がAと恋人になって、私が結婚して、子どもが生まれる頃に万里達も結婚、って感じね！未来設計完璧だわ」

「楽しみだなあ、家族が増えるの」


…頼むから、早く戻って来い、A。

無論、この会話は聞かれない方向で。

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