彼は負けず嫌い ページ47
ー数分前ー
万里SIDE
早めに着いたから、校内まで迎えに行こうと思っただけなんだが。
体育館にでもいるかと歩いている途中で、AからLIMEが来た。
生徒会室にいると言うから、階段に向かっていたのだ。
「(そこで、こいつに会うとは)」
「摂津先輩、ですよね」
松江瞬。
Aから聞いていた、きな臭い次期生徒会長。
「そうだけど、何か用」
「…会長の迎えですか?最近、とても仲が良さそうですね」
「それ、お前に関係ある?」
めんどくせ。
表情は落ち着いていて、友好的にさえ見える態度だが…なるほど、確かにきな臭い。
「僕に関係はありませんね。ただ…」
「ただ?」
「Aさんのこと、とても尊敬しているんですよ」
不意に瞳の色が暗くなる。
窓から差し込む太陽の光が薄くなったからだ。雨が降りそうな天気。
「そうかよ。話は終わりか?俺は行くぞ」
「…えぇ、呼び止めてすみませんでした」
松江の横を通り過ぎて、生徒会室に向かう。すれ違う一瞬、松江が俺を睨んだ。
「……あなたはAさんに、ふさわしくない」
松江のその声は、俺に届くことはなかった。
.
生徒会室はこの廊下の奥だ。
扉のところに人影が見えて、Aかと思ったが違う。
「…Aさん」
『ん?』
副会長の早乙女響だ。Aも生徒会室の中にいるようで、2人の会話が聞こえる。
Aに話したいことがあると言う早乙女の様子が引っ掛かって、咄嗟に陰に隠れた。
「僕がミスターコンで優勝したら、1つお願いを聞いてほしいんだ」
『…聞けば、いいの?』
「いいよ。叶えてくれるかどうかは、聞いてから決めて」
…何だそりゃ。
嫌に消極的だな。"ミスターコンで優勝したら"って条件付きで、叶えるかは聞いてから決めていい?
Aが今までにも話していたが、早乙女響という男は優れた人格者だと聞く。
能力も高く、Aの隣に立つのにふさわしい人間だ、と学内新聞に書かれているのを見たこともあった。
花学の生徒は大抵、会長と副会長と言えばお似合いのカップルだ、なんて考えているだろう。
あー、腹立ってきた。
「(Aは俺のだっつーの)」
条件からして損はしないと判断してか、Aは早乙女の頼みを了承したらしい。
そんなもん、断ればいいのにと思った。
年明け、劇団の連中と言った初詣のおみくじを思い出す。
「(ライバル…早乙女響か)」
負けてたまるかよ。
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わず - すごく面白いです!更新楽しみにしてます! (2019年9月10日 14時) (レス) id: 1511d926d3 (このIDを非表示/違反報告)
rena(プロフ) - 更新待ってます (2018年8月30日 2時) (レス) id: 8104f6caff (このIDを非表示/違反報告)
さーや(プロフ) - すごく面白くていつも楽しみにしています!更新応援してます! (2017年9月6日 8時) (レス) id: a8b7ed9872 (このIDを非表示/違反報告)
おにぎり。 - とてもとても面白くて、何回もみています!ゆっくりことこととお待ちしております。 (2017年8月5日 19時) (レス) id: 392125dbe2 (このIDを非表示/違反報告)
ことみ(プロフ) - 最高でした♪ 続き、楽しみにしてます! (2017年7月4日 23時) (レス) id: c79b5cac48 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:群青 | 作成日時:2017年6月14日 9時