砂糖吐け ページ33
万里SIDE
あーーーーーーー。
「…万里くん、大丈夫？」
「んあ…監督ちゃん…」
「何かあった？さっき席外したのって、Aちゃんに電話してたんでしょ？すぐ切ったみたいだけど」
さすが監督ちゃん、鋭い…。
小さな個人経営の居酒屋、一番広く店唯一の宴会席。
その中の隅に隣り合って座った俺と監督ちゃんは、それなりにこの打ち上げを楽しんでいる。
今日の手伝いも、裏方だったがかなり勉強になったし。
卒業も間近になって、あちこちの劇団やワークショップに顔を出しているが、毎回得るものがある。
やっぱり、演劇は面白い。
「いや、まあ…ちょっとな」
「ちょっと？」
「…ちょっと、本音を零しちまって、それが良かったのかどうか考えあぐねてたとこ」
「ははあ、成程。Aちゃん、鈍感だもんね」
「監督ちゃん、察し良すぎね？」
別に、至さんに嫉妬した訳では無い。…ちょっとはしたかもしんねーけど。それは重要ではなくて。
ただ、この店に来て、AがいなくてもAの顔が思い浮かんで、一緒に来たいなって思って。
俺は自然と2人でって思ってて、でもあいつは他に誰か誘うことも考えてて、簡単に実行しようとして。
安易に他の男を喜ばせようとしてるし、男の部屋に行くのも躊躇ないし。
「俺だけなのかよって、思っちまったんだよなぁ」
俺は、お前のこと考えるだけで精一杯なのに。
気づいたら電話していて、
気づいたら本音を少し、零していた。
「で、Aちゃんの反応は？」
「……聞く前に切った」
「…万里くん、思いの外ヘタレなとこあるよね」
「…うるせーよ」
自覚済みだわ。
「それだけ、Aちゃんのことが好きなんだね」
「何なに、摂津くん片思い中なの？」
会話が聞こえたのか、近くに座っていた演出家が口を挟む。途端に周辺の劇団員がざわついた。
「え！そうなの！？」
「あんた、摂津くん狙ってたのにね〜」
「ちょ、言わなくてもいいでしょ」
「しかし摂津くん程のイケメンが片思いとは、意外だな」
「彼、こう見えてびっくりするくらい一途なんですよ」
「立花さんがそこまで言うなんて！」
「そんなに良い女なんだ？気になるな」
もう好きに言わせとけ。半ば諦めモードで薄く笑っていると、今回の主演にそう問われる。
良い女かって。決まってんだろ。
「俺が好きで好きで堪らなくなって、余裕かませないくらい良い女ですよ。絶対譲りませんけど」
ヤケクソだ。ここにいる全員砂糖吐け。
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わず - すごく面白いです！更新楽しみにしてます！ (2019年9月10日 14時) (
レス) id: 1511d926d3 (このIDを非表示/違反報告)
rena(プロフ) - 更新待ってます (2018年8月30日 2時) (レス) id: 8104f6caff (このIDを非表示/違反報告)
さーや(プロフ) - すごく面白くていつも楽しみにしています！更新応援してます！ (2017年9月6日 8時) (レス) id: a8b7ed9872 (このIDを非表示/違反報告)
おにぎり。 - とてもとても面白くて、何回もみています！ゆっくりことこととお待ちしております。 (2017年8月5日 19時) (レス) id: 392125dbe2 (このIDを非表示/違反報告)
ことみ(プロフ) - 最高でした♪ 続き、楽しみにしてます！ (2017年7月4日 23時) (レス) id: c79b5cac48 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：群青 | 作成日時：2017年6月14日 9時
