【A3!】彼女の攻略、ハードモード 2nd【摂津万里】

開花宣言 ページ32

疲れた。
今日はやたらと疲れた。楽しかったけど。
自室のベッドに倒れ込む。

時計を横目に見ると、20時前を指していた。

幸くんのドレス試着が終わった時に夕飯の召集がかかって、臣さん特製のシチューを堪能してきたところだ。


『万里といづみさん、夕飯はいらないんだっけか』


いづみさんから臣さんに連絡があったそうで、手伝いに行った劇団の厚意で打ち上げに参加してくると。

しかし今日は、行く先々で万里の話や名前を出されたな…。

私の中で育っている彼への気持ちが、みんなにバレてることがよくわかる1日だった。


『ん、LIME来てる』


噂をすれば何とやら。
万里からだ。


"打ち上げで来た店、BGMがブラウォーの曲"


まじか。
ブラウォーの曲ってあれでしょ、やたらカッコイイ壮大なやつ。


『店長センス良い』


思わず声に出したそのままを打ち込む。
すぐ既読つくじゃん…打ち上げなうだろ、スマホ触っていいのか。

ピコンッ、と着信音が響く。
画面を見て、勢い良くベッドから起き上がってしまった。


"しかもメニューに深淵世界の再現飯っぽいのがある"


まじかー！！！
深淵世界、ゲーム性が面白いのは勿論、登場するご飯が全部美味しそうなんだよね…！


"今度行こうぜ"

『行く行く絶対行く…』


とそこで、同じくブラウォーや深淵世界オタクである至さんを思い出す。

誘えば来たがるのは間違いない。


"至さんも誘う？絶対テンション上がるよ"

"あ、さっき夕飯の時いたから、部屋にいるはず。声掛けて来ようか？"


善は急げだよね。やはりすぐ既読がついた。

が、今度はなかなか返事が来ない。
珍しいな、いつも既読つけたら即返信なのに。

数分後、鳴り響いたのは通話の着信音。


『あれ、電話？…はいな』


万里と電話なんて、頻繁にしている。
でも後ろから聞こえる、居酒屋特有のざわめきが、妙に非日常を感じさせる。


[よぉ。…至さん呼ぶかどうかって話だけど。お前が呼びたいならいいよ]


万里の声も、何処か強ばっているように聞こえて。
何故か私は一言も発さないまま、彼の言葉を待つ。


[でも部屋に行くのはダメ、呼ぶなら俺から声かける。…あと、]









[俺は、Aと2人で行きたい]


プツッ、と電話が切れた。


『………』


姑息だ。
卑怯だ。

そんなの。


『好きになっちゃうじゃないか』


なんて。
本当は、前から好きだけど。

種から芽が出て、茎が伸びて、蕾が膨らんで。
やっと、花が咲いた。

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