空港で告白して抱き合うやつ ページ28
どうしてこうなった。
「A!そんな男について行くのか!?」
「離してください!彼女は俺と生きていくんだ!」
私の左手を引く、男の人らしいゴツゴツした手。丞さんの手である。
一方、私の右手を引く、華奢に見えてしっかりした綺麗な手。紬さんの手である。
「待て。A、行かないでくれ…」
不意に視界が翳る。
後ろから腰に手を回されたらしい。いくつか細かい傷のある手。左京さんの手である。
ハーイ、皆さんご機嫌麗しゅう。
私はみんなのアイドルAちゃん。
現在、
白馬に乗ってそうなマッチョイケメンの丞さん、
お花が似合う儚げイケメンの紬さん、
怖そうだけど妙に守りたくなるインテリイケメンの左京さん、
イケメン三人衆に取り合われてるよ☆
っっってやってられるかーい!!!!
「A、今ここで決めろ!」
「お前は誰と生涯を共にするんだ?」
「ねぇ、僕と生きてくれるよね?」
『わ、たしは……』
3人に見つめられて、言葉に詰まる。
誰と生きるか決めろって、そんなの…
『っ、ごめんなさい』
私の謝罪に、3人の手が離れる。
自由になった両手を、私は胸の前で握りしめた。
「…それは、誰に対する謝罪だ?」
『3人ともよ…私、ずっと忘れられない人がいるの』
「まさか、それって…」
「…万里か」
返事の代わりに、顔を俯かせる。
3人が苦々しげに表情を歪めた。
「…万里がいなくなったこの2年間で、Aを振り向かせられなかったのは俺達自身だ」
「俺達は、Aの答えを受け止めるしかないな」
「…そうと決まれば、やることは1つか」
「あぁ。タクシーは俺が呼ぼう」
「兵頭に連絡しておく。ゲートへ向かう時間をギリギリまで遅くさせないと」
話がついたのか、丞さんと左京さんはそれぞれスマホを出し、どこかに連絡を取り始める。
紬さんは私の顔を見て、名前を呼んだ。
「これあげる。今日あいつが乗る飛行機の便、メモっといた」
『え…』
「タクシーを飛ばせば間に合う」
「ちょうど近くに空車があった。駅前にすぐ来るぞ」
「兵頭が空港で時間を稼いでる」
『みんな…』
「行け、A」
「振り返るな。俺達は大丈夫だ」
「…幸せに、なって」
『〜っ、ごめ…』
ごめんと言いかけて、やめた。パチンと両手で頬を叩いて、涙がこぼれる顔を上げる。
『ありがとう!』
3人に笑顔を向けて、駆け出す。
走れ。駅まで。
急げ。彼の、万里のところまで。
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わず - すごく面白いです!更新楽しみにしてます! (2019年9月10日 14時) (レス) id: 1511d926d3 (このIDを非表示/違反報告)
rena(プロフ) - 更新待ってます (2018年8月30日 2時) (レス) id: 8104f6caff (このIDを非表示/違反報告)
さーや(プロフ) - すごく面白くていつも楽しみにしています!更新応援してます! (2017年9月6日 8時) (レス) id: a8b7ed9872 (このIDを非表示/違反報告)
おにぎり。 - とてもとても面白くて、何回もみています!ゆっくりことこととお待ちしております。 (2017年8月5日 19時) (レス) id: 392125dbe2 (このIDを非表示/違反報告)
ことみ(プロフ) - 最高でした♪ 続き、楽しみにしてます! (2017年7月4日 23時) (レス) id: c79b5cac48 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:群青 | 作成日時:2017年6月14日 9時