◇ ページ32
「……ごめ」
「謝って、花が生き返るわけじゃないよ?」
ギュ、と力の入り続ける腕と言葉に私は申し訳なくて泣きそうになる。
ちらりと潰された花を見る。
うん、そうだ。確かに私が謝ったところで花が見事に生き返るなんてことはない。
「で、も…ごめんなさい…」
「……」
ここで謝らないのは、潰してしまった花への冒涜かもしれない。難しいことはよくわからないけど。モノに感謝して生きるのが常の貧乏人だった私はそうする。
「…ごめんね。意地悪した」
「えっ」
「俺も悪いよ。今回はね。
フラフラだったAを手伝わしちゃったし。」
ぐ、と止めていた涙が出そう、になった。
「でも、俺ちょっと怒ってるからさ。
血、ちょうだい」
「あ、ゔっ」
抱きしめられていたその体制はまるで身を差し出す餌のようだった。
ぢくり、と刺された箇所はやっぱり痛い。じわじわと毒がからだ、にまわ…
がくん、と2度目の擬音に私は気を動顚させる
「あ、あ」
じくじくと痛みを増す噛み箇所。それに比例して抜けていく力。舌なんてもう回らない。
足の力も抜けて立っていられるのはひとらんくんが支えてくれるおかげだ。
「あ゙ー。うま。」
おっさんみたいな口使いに少し笑ってしまう
「おっさんみらい」
「あ?一応怒ってんだからね。
体調の自己管理は当たり前でしょ?大人なんだからそれくらい自分ですること。
3輪の花が亡くなっちゃったのは悲しいけど、Aが倒れるとそれ以上に大騒動で大変なんだから」
ほら、とひとらんくんが木陰を指さす。
そこにはゾムやコネシマ、グルッペンが心配そうにこちらを眺めていた
「取り敢えず、休んでな。次目を開けた時にはベッドの上だから」
そう言われて、素直に目を閉じた。
目を覚ました時、近くに白い軍服の彼はいなかった
だけど、机の上に透明な花瓶に飾られた白い3輪の薔薇をみて私はなんだか安心した
添えられたメモにはクスリと笑って
『かわりに、3人を犠牲に白いバラを錬金しました。
綺麗でしょ?』
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アリス - お疲れさまでした。とてもよかったです、これからも頑張ってください!!! (2020年10月4日 15時) (レス) id: 48980b5e27 (このIDを非表示/違反報告)
闇ちょこ(プロフ) - だーーっ!!((番外編は結構甘々で面白かったですぅ…もう10周してきます!! (2020年5月25日 13時) (レス) id: f89a326571 (このIDを非表示/違反報告)
ぺとるしか(プロフ) - どうしてもまたこの作品が読みたくなって、夜中サイト内を探し回り漸くたどり着きました…!!本当に大好きです…名作…!!何度も読み返したくなる素敵なお話を書いて下さり、本当にありがとうございます…(;ω;)また最初から読み直したいと思います!! (2020年5月12日 4時) (レス) id: 1ba63f4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
倉崎(プロフ) - ふぃやぁ!!!感動しました。お疲れ様でした!!!! (2019年6月30日 19時) (レス) id: 27aa211cd5 (このIDを非表示/違反報告)
山内優菜(プロフ) - 完結お疲れ様でした!これが最後なのが残念です(TT)ありがとうございました! (2019年6月28日 20時) (レス) id: 6807067b24 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:根無し | 作成日時:2019年6月9日 12時