彼らとの毎日５日目 【短編集】【Fischer's】

☆可愛い後輩 いち【Motoki】 ページ14

｢あっ、Aさん！｣


声と共に、駆けてくるのは、後輩のモトキくん。

とは言っても、

歳はそんなに変わらないのだけれど。


その、ふわふわとした笑顔。


｢あぁ。｣


と、手を振ることしか出来ない私。


自分でも、全く可愛げが無いと思う。


先に大学生になった先輩に、

モテるから気をつけろよと言われた、大学入学当初。

面倒だからと、言い寄ってくる男を全てはねのけた結果。

鋼の女、なんて異名が付いてしまって。


合わせて、元々キツかった目付きが、もっと悪くなって。

サバサバ最高、カッコイイ、なんて言って集まってくる女の子だけが増えた。


私に話しかけてくる男は、


｢今日もいい天気ですね。｣


なんて、隣で微笑むモトキくんぐらい。


｢そだね。｣


返事をしながら、コートのポケットに手を突っ込んで、マフラーに顔を埋めた。


｢今日は、講義いつまでなんですか？｣


くりっくりの瞳が、尋ねてくる。

下手したら、ってか絶対、私より可愛い。


｢ん、教えない。｣


言うと、

えー。と残念そうな顔。

私は、はぁとため息を付く。


｢だって、どうせ、また門のとこで待ってるでしょ？｣


｢バレましたか。｣


｢バレバレだっての。｣


なんでか、そんな会話なのに、モトキくんは嬉しそうに笑う。

本当、不思議な子。


｢Aさんは、彼氏とか居ないんですか？｣


急に飛び出たその質問に、


｢居るように見える？｣


じとっとそっちを見ると、


｢見えません。｣


そんなにしっかり言われると、逆に清々しいな。


なんて思いながら、


｢だよね。｣


と、苦笑した。

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