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辰哉side
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亮平に言われてドキッとする。
辰哉「さすがにそれはないでしょ?」
でも・・・
涼太「入れて・・・みる?」
半信半疑で入力した。
涼太がパスワードを入れた瞬間、
開いたトップ画面。
辰哉「嘘・・・」
涼太「開いた・・・。」
亮平「ねぇっ・・・・・。」
少ないアイコンから見える、
開いたトップ画面の背景。
それは、
俺ら家族がキャンプ場に来てすぐに撮影した思い出の写真だった。
辰哉「っ・・・・・・。」
この後、起こる事故も、
そこから始まる不幸の連続も
まだ何も知らない笑顔の俺ら。
幸せだったこの時までは。
ラウールも真ん中で満面の笑み。
これが、家族で撮った最後の写真になるなんて、
この時は微塵も思っていなかった。
亮平「俺たちがさ、ずっと償え償えって言ってたからだよね。」
涼太「そうだね・・・きっと。」
ラウールは携帯を開くたびにあの日のことを思い出していたんだ。
俺らが、ずっとラウールに重たい歪んだ十字架を背負わせていたから。
とりあえず、携帯とスクールバックを松本さんに渡す。
帰ろうとした松本さんが、「あっ!」っと思い出したように、
松本「ラウール君に手を合わさせてもらっても良いですか?」
ラウールがにっこりと微笑む仏壇に目を向ける。
今更だけど、
ラウールに俺らができることって何だろう。
きっと・・・
何かあるはず。
辰哉「松本さん。」
松本「はい。」
辰哉「俺もラウールのために家族のためにできることをやります。」
辰哉「だから・・・絶対捕まえてください。」
松本「もちろんです。」
そう口にした松本さんは、
さっきの涙した顔ではなく、頼もしい顔だった。
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作者名:ゆり | 作成日時:2022年11月1日 0時