歪んだ十字架８ (ページ25)

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辰哉side

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ラウが笑ってる。

こっちを向いて。

ニコって笑って、

俺を見つめてる。

今にも「辰にい？」って言いそうなのに。

いつまでたっても

言ってくれない。

　

　

　

辰哉「・・・・・・。」

涼太「ねぇ。辰哉？」

辰哉「あ、うん？ごめん。なんか言った？」

涼太「いや・・・・・。」

辰哉「ごめん。ぼーっとしてた(笑)何？」

涼太「俺今日遅くなるから。ごめん。晩ご飯お願い。」

　

ラウールの死は家族に大きな影響を与えた。

あれから・・・

厳密には２か月くらいたっただろうか。

ラウールが亡くなってからの時間はあっという間だった。

そんな考えている余裕がないくらい実際には忙しくて。

学校や関係機関に連絡して、葬儀をして・・・

母さんにも伝えて、

警察にもいろいろ聞かれた。

まさか弟の葬儀をすることになるなんて思ってもみなかったから。

張り裂けそうな気持を保つには忙しくしている方が丁度良かった。

　

だから今。

その忙しさが急に緩和されて、

ほっとした時にふと思い出してしまう悲しみを

どう処理していいのかが分からない。

　

・

　

辰哉「晩ご飯さ・・・どうする？」

亮平「今日俺、ご飯いいや。なんか食べてくる。」

大介「俺も。」

康二「俺も食欲ないわ・・・。」

　

家族もバラバラに崩れてしまっているこの状況。

翔太や照もやっぱり責任を感じているのか、あんまり家に帰ってこないし。

俺らと家で会うこともここ数日ない。

　

　

父さんが死んでしまった時みたいに、

暗くて

冷たくて

重い

家族の空気。

　

ラウールとの突然の別れに、誰も心がついて行かない。

悲しみに飲み込まれて、溺れているような・・・

そんな感覚だった。

・