【オリジナル】君は夢の中で僕を殴った。

04：朝とドア ページ4

おはよう。世界。
　世界は朝日で照らされてると言うのに、この部屋はなんてザマだ。相変わらずだ。くらい部屋だ。時を止めたままの、答え合わせのない部屋だ。

　いや違うな。答えはあるけど伏せてある。テスト用紙をひっくり返して机に添えてるみたいに。僕がそうした。僕が答えを見なければ──この部屋はいつまでもシュレディンガーの猫だから。

　映画館と漫画の夢を見た後に来る朝は、不思議な気持ちにさせられる。君がいたのは、本当に現実だったのか分からなくなる。本当に、本当に夢の中だけの出来事だったのでは──なんて思う思考を振り払って、僕は朝ご飯の支度を始める。

　まずは顔を洗って……足元のペットボトルが邪魔でつま先で押しやる。彼女が来たら掃除しよう。2人でやれば楽しいだろう。なんて彼女が聞いたら怒るかな。

　僕は、ふっとドアを見る。
　代わり映えのない朝だから、いつも通りの朝だから。ドアの向こうから──

「おはよう」

　そんないつも通りの朝の、いつも通りの君の声が聞こえてきそうで、暫くドアを見つめて……顔に水を掛けた。冷たい。水面台の鏡には疲れた自分の顔がある。

「うお……」

　間違って2人分のパンを焼くのもご愛嬌だ。
　間違った間違ったと僕は急いでひとつを食べる。もうひとつは、しばらく見つめてから食べた。

　答え合わせさえしなければ、
　確定した結果がない限り、
　かもしれないがある限り、

　この部屋はパラレルワールドに繋がって。
　君はいつか、きっと、あのドアを開けるんだ。

「おはよう」──その声が、どんなものか忘れないうちに。
　Aの両親から電話が来ていたが、僕は聞こえないふりをした。

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