兄を求めて 20 ページ22
ロボロside
大先生が追い出されたことによって静まり返った医務室。
静かめな音で鳴っている心電モニターが、やかましい程うるさく感じる。
そんな静寂を引き裂くかのように、ペ神は口を開いた。
sn「...これで、シャスはシャスであることが証明されたな」
オスマンは俯いたまま、こくんと頷いた。
自分の妹が生きていてくれて、さぞかし嬉しいのだろう。
sn「今回のハッキングはすごく早かったね、なんで?」
『...あれやな、ブランド国はそもそも世界を旅してる国やから...自分の個人情報を自ら流出させてるのと同等なんだよなぁ...無国籍やし』
sn「なるほどね...」
『国の規模が大きければ大きいほどハッキングは難しいねん。国土がないブランド国は、ハッキングどうのうの話やないで?』
os「...おれは...」
sn「...」
オスマンが口を開いたので、俺は口を塞ぐ。
os「...おれは、いまのままでええんか...?」
sn「...それは、どういうこと?」
弱々しく声を掠めながら話したオスマンに、俺は少しだけ涙腺が緩む。
顔を上げたオスマンは大粒の涙を深緑の瞳から流しており、今まで見たオスマンの顔で、最も美しい顔をしていた。
os「...自分のきもちが、分からんねん...
気づいて欲しいけど、生きていて欲しい...こんなん、二つで一つやろ...
気づいたら死ぬ。クリスタル所持者やもん...だったら俺が俺を隠してしまえば、彼女だって死ぬことはあらへん...。
なぁ、どうすればええん?辿々しい俺を最後に、また俺を探しに出かけるんか...?」
sn「...」
os「頭が可笑しくなりそうなんや、もう...!この矛盾はどうすりゃ解決になる?俺はどうすればいつものオスマンに戻れる...?」
sn「それは...それはね...」
??「それは、自分が一番分かっているんじゃないか?オスマン氏」
背後から聞こえたバリトンボイスに背筋を凍らせ、俺は静かに振り返る。
そこには、目を細めてニタニタと笑っているグルッペンが立っていた。
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作者名:扇@リョク | 作者ホームページ:uranai.nosv.org/u.php/novel/usiro_member/
作成日時:2018年6月17日 14時