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『…うう…』
起きたばかりのふわふわした感覚と、保健室のベット特有の硬いスプリングを感じながら、ゆっくりと身体を起こす。
教室とは違う、石鹸や消毒液の匂いが混じった空間。そして、頭の鈍痛により先程の体育での1件を思い出し、私は今保健室に居るんだと察する。
『ああ、生きてた』
「それくらいで死なれたら、流石に俺が困っちまうよい」
私だけの空間を作っていた真っ白なカーテンを勢いよく開け、医務の先生もといマルコ先生が顔を覗かせる。
『……勝手に開けないで貰えます？』
「まずはおはようございますだろうよい」
『…おはようございます』
あまり乗り気では無いが、成り行きで一応挨拶を返す。
マルコ先生もおはようと返した後に、ズカズカと人のパーソナルスペースに足を踏み入れてくる。
『なんで来るんですか？』
「Aの頭が治ったかどうか確かめるんだよい」
こりゃ何言っても聞かねえな。そう思った私は、マルコを追い出すことを諦める。
ベットの縁に腰をかけ、俗に言う体育座りの形で膝に顔を埋める。
(…もう3時か)
時計の針は既に3時を迎えており、6時間目の授業がもうすぐで終わるところだ。
となると、5時間目から約1時間、私はここで寝ていたことになるのだろう。
授業中ということもあり、学校内はとても静かだ。マルコ先生と2人きりの空間ということもあり、謎の緊張が走っている。もちろん悪い意味で。
すると、急に頭が何かに包まれる感覚がした。それは現在進行形であり、マルコ先生の大きな手によって撫でられているのだろうとわかった。
『事案ですよ、先生』
と口では悪態をつきつつも、彼の大きくて温かい手に触れられるのは自然と安心するもので、無理やり手を振り払おうとは思わない。
「触れても痛くねぇってことは、大したこと無さそうだねい。
たんこぶも出来ていないようだし、頭の悪さは元からっぽいし、もう心配なさそうだよい」
『先生、今現在進行形で私の心はズタズタにされているんですが』
確かに頭わるわるなのは元からではあるが、普通そこまで言うか？
「大丈夫だよい。傷物になったら貰ってやるから」
中々高度…というか限りなくアウトなセリフではあるが、こんな彼でもカウンセリングの相手としては人気があるのだ。とは言っても、大体は話し相手をご所望しているだけだと思うが。
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作者名：あまちー | 作成日時：2022年9月19日 23時
