【鬼滅の刃】鬼殺隊の狐は絆を紡ぐ

形見 ページ38

『狐の呼吸、肆ノ型＿＿』

一瞬で最後の鬼との間合いを詰め、その頸を切り落とす。
そして鬼の体が崩れていく様子を横目に、日輪刀を鞘に収めた。

……うん。だいぶ以前の感覚を取り戻せてきたな。
煉獄さんと編み出した“炎の呼吸を元にした型”も安定して使えるようになってきた。

刀傷がすっかり治った手を開いたり閉じたりを繰り返しながら、小さく微笑む。

『こっちは片づきました。冨岡さん』

「……」

私の背後で、倍の数の鬼を相手にした冨岡さんに声をかけた。
冨岡さんは日輪刀を鞘に収めると、無言でこちらを見据える。


『これで任務達成、ですね！』

「……」

『冨岡さんとの合同任務で助かりました。まだ少し体が鈍っていて、こんな大勢の鬼は相手にできなかったと思うので……』

「……」

……話に聞いていた通り、凄く話しづらい。
任務前は鱗滝さんや炭治郎のことを話題に上げてみたけど、「あぁ」とか「そうか」とかで、全然話が続かなかったし……。

というか、なんでこんなにも見られてるんだろう？
服装はいつもの隊服だ。
昼寝の後は寝癖がついていないか念入りに確認したし、髪は綺麗に整っていると思うんだけど……。

無言の視線の意図が読み取れず困惑していると、突然冨岡さんが今まで閉じ切っていた口を開く。


「……その羽織」

『えっ』

羽織、って言った？
この羽織が、どうかしたのかな？

私は自分の着ている羽織を見下ろした後、冨岡さんに続きを促すように視線を向ける。

「その羽織は……お前の物か？」

『いえ、これは……形見なんです。最終選別前、私に人との繋がりや、守る強さを教えてくれた……大切な人の』

脳裏にあの狐面や彼との会話が過り、自然と頬が緩む。

＿＿＿＿錆兎。


「……その人物は、」

「伝令！ ゴ主人、伝令デスゥ！！」

冨岡さんの言葉を遮り、茜の声が辺りに響き渡った。
茜は素早く私の肩に登ると、その詳細を伝える。

「離レノ機関庫ニテ、切リ裂キ魔ノ鬼ガ出現デスゥ！ 現在、鬼ハ整備士ノ少年ヲ人質ニトリ、炎柱ガ交戦中！ 至急応援ニ向カウデスゥ！」

『切り裂き魔……』

近頃、煉獄さんが追いかけている鬼だ。
昨夜も女性が一人、切り裂き魔の被害に遭っている。

『冨岡さん、今日はありがとうございました。一緒に任務に当たることができて良かったです。では、失礼します。……茜、案内をお願い』

「コッチデスゥ！」

私は冨岡さんに頭を下げると、先陣を切って駆けていく茜の後を追いかけた。

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