胸を張って ページ37
静かな夜道が私達の間の沈黙を煽り、気まずい雰囲気が流れる。
居たたまれない思いで口を開くと、それは前を向いて歩き続ける煉獄さんの言葉によって遮られた。
『師匠。あの……』
「謝罪なら聞くつもりはない！」
『っ！』
突き放すような鋭い言葉。
それを正面から受け止めるのはあまりにも酷で、足を止めて俯きかけると、煉獄さんはくるりと振り返る。
その表情はいつもの笑顔で、思っていたよりも穏やかなものだった。
「蛍原少女の謝罪は、産屋敷邸で何度も聞いたからな！ それに俺は、君を責めようとは思っていない」
『え……』
「君はただ、あの少年と鬼の少女を想って行動しただけだ。そして君と少年の言葉通り、あの鬼は稀血の不死川に襲いかからなかった。お館様の決断に異論はない！ となると、俺が君を咎める理由もないだろう」
『！』
あの柱の人、稀血だったんだ……！
だからあの人は自分から“証明する”と名乗り出て……禰豆子ちゃん、相当辛かっただろうに。
禰豆子ちゃんのことを考え、無意識に険しい表情を浮かべていたのだろうか。
煉獄さんはこちらに歩み寄ると、ポンと私の肩に手を置いた。
「大丈夫だ。彼らを信じて守ろうとした、君の判断は正しかった。胸を張っていい！」
『……はい！』
私が頷くと、煉獄は目を細めて微笑む。
そして私は煉獄さんの横に並び、再び煉獄家に向けて歩きだした。
先程までの居心地の悪い雰囲気は消え去り、二人で会話を弾ませながら。
「手は大丈夫か？」
『はい。しばらくは刀を握らないようにとは言われましたが』
「そうか！ 大事に至らなくてよかった！」
『ありがとうございます。ところで師匠、今日の任務は大丈夫なんですか？ 私なら一人で帰れるので、このまま任務に向かっても……』
「うむ！ 伊黒から今日くらいは弟子の側にいてやれと言われてな！ 今日の任務は伊黒と甘露寺に任せて、非番を貰ったんだ！」
『伊黒さん？』
柱の人達の話を聞いたり、炭治郎達のことについて話したり。
会話が途切れることはなく、普段よりも饒舌になっていたかもしれない。
そんな私達を、優しい満月が見下ろしていた。
鬼の時間を示し、いつもは忌々しく感じる月夜が、今日はとても美しく思えた。
『岩柱、悲鳴嶼行冥さん……』
「どうかしたか？」
『いえ、何も』
同姓同名。
でも、本当にあの人は……私の知っている先生なのかな。
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紅いちご - 続編ですか！！楽しみに待ってますね！ (2021年11月6日 22時) (
レス) @page41 id: 0ffbfabdee (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 続編おめでとうございます！これからも頑張ってください(๑•̀ㅂ•́)و✧ (2021年11月6日 5時) (レス) @page41 id: 6b2570d7e2 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉いろは(プロフ) - むつき。さん» コメントありがとうございます！ 本編でもこの二人の関係性はしんどいので、今後どう夢主ちゃんと絡ませていこうか悩んでいます(苦笑)無限列車が近づいてきて精神が削られていますが、更新頑張っていこうと思います！ (2021年11月4日 22時) (レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 冨岡さんと錆兎さんのシーンにめちゃめちゃぐっと来ました（語彙力）更新頑張ってください！ (2021年11月3日 18時) (レス) @page38 id: da60582d52 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉いろは(プロフ) - 匿名希望さん» ご指摘ありがとうございます！ 本当ですね！ 全然気がつきませんでした……ありがとうございます！ (2021年10月22日 22時) (レス) @page29 id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅葉いろは | 作成日時：2021年9月22日 15時
