頑張ったね ページ35
「Aさん。お迎えが来ていますよ」
炭治郎達の部屋で話し込んでしまい、窓に映る空が暗くなってきた頃。
蝶の髪飾りをつけた女性__蟲柱の胡蝶さんが部屋にやってきて、そう告げた。
『ありがとうございます。胡蝶さん』
「Aちゃん行っちゃうの!? もう少し、せめて後1ヶ月、欲を言うならこの先もずっと俺の側で添い遂げてくれよおおぉ!!」
「善逸、これ以上Aを困らせるな!」
私は椅子から立ち上がり、禰豆子ちゃんの箱に手を当てる。
『また会いに来るからね。禰豆子ちゃん』
そう言うと、箱の中から微かに禰豆子ちゃんの声が聞こえてきた。
次に終始ベッドの上で静かにしていた伊之助へ近づき、ポンと猪の被り物を撫でる。
『伊之助も、今度は元気な姿を見せてね』
「ほわほわ……」
「てめええぇ何Aちゃんに頭撫でられてんだよっ!! Aちゃん俺には!? 俺も撫でてくれよおぉ!!」
善逸は素早く短い両手で私の手を取ると、それを自分の頭にやった。
デレデレとした善逸の笑顔につられて頬を緩ませていると、こちらに向けられたじとっとした視線に気がつく。
『……炭治郎も撫でてあげようか?』
「い、いや! 俺は長男だし、そんなことは……!」
『嘘。嗅覚も聴覚も優れてるわけじゃないけど、私だってなんとなくならわかるんだよ? たまには遠慮しないで、甘えてよ』
「……そ、それじゃあ」
頬を赤くした炭治郎は、何故かぎゅっと目と口を固く閉じてこちらに顔を向ける。
私は必死そうな炭治郎の顔にクスリと笑い、炭治郎の頭に向けて右手を伸ばす。
『……』
途中で腕の向かう先を変え、左手も持ち上げて、両手を炭治郎の肩へと回す。
そして私は、正面から炭治郎に抱きついた。
「えっ、な……! Aっ!?」
背後で善逸の悲鳴が上がるが、私は構わずに炭治郎を抱き締める腕に力を込めた。
『禰豆子ちゃんのために、これまで一人で……よく頑張ったね』
「っ!」
妹を人間に戻すため、鬼殺隊として必死に奮闘する日々。
心落ち着く時間なんて、ほんの少ししか得ることができない。
そんな中、味方なはずの人達からも嫌悪の視線を向けられ……
__辛くなかったはずがないだろう。
炭治郎はそっと私の背中に手を回すと、穏やかな口調で語る。
「ありがとう。やっぱり、Aは優しいな。
……でも、俺は一人じゃなかった。善逸も伊之助も、冨岡さんや鱗滝さんも、Aも、皆がいた。全部、皆のおかげなんだ」
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紅いちご - 続編ですか!!楽しみに待ってますね! (2021年11月6日 22時) (レス) @page41 id: 0ffbfabdee (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからも頑張ってください(๑•̀ㅂ•́)و✧ (2021年11月6日 5時) (レス) @page41 id: 6b2570d7e2 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉いろは(プロフ) - むつき。さん» コメントありがとうございます! 本編でもこの二人の関係性はしんどいので、今後どう夢主ちゃんと絡ませていこうか悩んでいます(苦笑)無限列車が近づいてきて精神が削られていますが、更新頑張っていこうと思います! (2021年11月4日 22時) (レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 冨岡さんと錆兎さんのシーンにめちゃめちゃぐっと来ました(語彙力)更新頑張ってください! (2021年11月3日 18時) (レス) @page38 id: da60582d52 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉いろは(プロフ) - 匿名希望さん» ご指摘ありがとうございます! 本当ですね! 全然気がつきませんでした……ありがとうございます! (2021年10月22日 22時) (レス) @page29 id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅葉いろは | 作成日時:2021年9月22日 15時