よろしく ページ34
「いったあああああぁぁぁ!! なんなのこれぇ!! なんか落ち着く音が聞こえて澄んだ綺麗な声に俺の名前読んでもらったと思ったらさぁ!? 何で殴られてるの俺!? 何で炭治郎に冷めた視線向けられてるの俺ぇ!!?」
目を開けた善逸は頭を押さえ、そう喚き立てる。
鼓膜が破れそうなほどの大声に顔をしかめながら、私はおどおどと善逸に謝罪する。
『えっと、ごめんね。急に抱きつかれてびっくりしちゃって、つい……』
「いやA、今のはどう考えても善逸の自業自得だ。Aが謝る必要はないと思うぞ。むん!」
『むん?』
「冷たい! すっごく冷たあぁい!!」
善逸が泣き止み、落ち着いてきた頃。
私は善逸に頭部を見せて貰い、アザなどができていないか確認する。
『よかった……そこまで腫れてないみたい。まだ痛むようだったら、蝶屋敷の人にちゃんとした健診をしてもらってね』
「えへへ、ありがとうぅ」
なんか、表情がコロコロ変わる人だなぁ……。
先程までギャン泣きしていた善逸は、打って変わった満面の笑顔をこちらに向けてくる。
「最終戦別にいた子だよね? 俺は我妻善逸っていうんだぁ。君の名前は?」
『蛍原A。よろしくね!』
私がそう返すと、善逸はピタリと表情と体を硬直させる。
「もしかして、炭治郎がよく話してた姉弟子の……」
『うん。多分、私のことかな』
考えてみれば、炭治郎にとっては真菰も姉弟子という立ち位置になるのかもしれない。
二人の姉弟子……なんかカッコよくていいな。
そんなことを考えていると、善逸は俯いてわなわなと肩を振るわせ始める。
稲妻のような幻覚が見え、私は首を傾げながら彼の名前を呼ぶ。
『善逸?』
「炭治郎、お前……禰豆子ちゃんだけじゃ飽き足らず、こんな可愛い子と何年も同じ家で過ごしてたのかああぁ!!? 女の子二人に囲まれて天国のような日々を過ごしてたとか、やっぱり鬼殺隊舐めてんだろお前えぇ!!!」
「なんか誤解してるぞ善逸! あの場には鱗滝さんもいたし、善逸が想像しているようなことは何も……」
「黙れ堅物デコ真面目があぁ!! 粛清だ粛清いいぃ!!」
先程よりも近距離で善逸の高音が響き、耳がキーンとする。
その後、全てを説明して善逸が再び落ち着くまで、およそ半刻ほどの時間を要した。
私は苦笑しながら、隣のベッドに声をかける。
『なんか、煩くしてごめんね』
「……イイヨ。キニシナイデ」
そう語る伊之助の声は、予想以上に酷いものだった。
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紅いちご - 続編ですか!!楽しみに待ってますね! (2021年11月6日 22時) (レス) @page41 id: 0ffbfabdee (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからも頑張ってください(๑•̀ㅂ•́)و✧ (2021年11月6日 5時) (レス) @page41 id: 6b2570d7e2 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉いろは(プロフ) - むつき。さん» コメントありがとうございます! 本編でもこの二人の関係性はしんどいので、今後どう夢主ちゃんと絡ませていこうか悩んでいます(苦笑)無限列車が近づいてきて精神が削られていますが、更新頑張っていこうと思います! (2021年11月4日 22時) (レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 冨岡さんと錆兎さんのシーンにめちゃめちゃぐっと来ました(語彙力)更新頑張ってください! (2021年11月3日 18時) (レス) @page38 id: da60582d52 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉いろは(プロフ) - 匿名希望さん» ご指摘ありがとうございます! 本当ですね! 全然気がつきませんでした……ありがとうございます! (2021年10月22日 22時) (レス) @page29 id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅葉いろは | 作成日時:2021年9月22日 15時