【鬼滅の刃】鬼殺隊の狐は絆を紡ぐ

手当て ページ32

覚えている。
傷一つなく、袴を汚すこともなく最終戦別を突破していた子だ。

私と同じ女の子で、同じ日に鬼殺隊に入隊したはずなのに、彼女の凛とした風格は、私とは酷くかけ離れてるような気がした。

隠の女性がカナヲちゃんに声をかけるが、彼女は無言でニコニコと微笑むまま。
彼女の考えが読み取れずにおろおろとしていると、背後から強気な声が聞こえてきた。

「どなたですか！！」

「いえ、あの、胡蝶様に……」

「隠の方ですか？ 怪我人ですね。こちらへどうぞ」

髪を二つに結った子に案内され、カナヲちゃんのいた蝶が舞う庭を後にする。


私は炭治郎達とは違う別室で、なほちゃんという三つ網の女の子に手当てをしてもらった。

「爪痕、ではないですね。刀傷ですか？ 剣士が刀を握れなくなったら元も子もないですよ。無理な特訓は控えてくださいね」

『あはは……』

柱の刀を素手で止めた。
なんて本当のことは言えないので、苦笑を浮かべて誤魔化す。

……ううん。違う。私が止めたんじゃない。
あの傷だらけの人は、私が素手で刀を握ろうとするのを見て、瞬時に刀の勢いを殺したんだ。

もしあの人が本気で刀を振るっていれば、今頃、私の右手の指は吹き飛んでいる。

そう考えると、あの人も他の柱達も、悪い人ではないのかもしれない。
鬼殺隊の大半がそうであるように、一際鬼に強い憎しみを抱いているだけなんだと思う。

……まぁそれでも、禰豆子ちゃんを刺したことについては許さないけど！


『炭治郎、入るよ』

なほちゃんから炭治郎達のいる部屋を教えて貰い、その扉をノックする。
部屋には三台のベッドが窓際に並んでおり、その一番奥のベッドに入院着を着た炭治郎が横になっていた。

「A！ 怪我は大丈夫なのか？」

炭治郎はベッドから飛び起きると、心配そうに眉を下げる。
手前のベッドで横になっている人達(？)は眠っているようで、私は大きい声を控えるようにと人差し指を口元に当てる。

そして炭治郎のベッドに歩み寄り、その脇にあった椅子に腰を掛けた。

『うん。しばらく右手は使わないように言われたけど、痕も残らずに治りそうだって』

「よかったぁ……、ごめんな。俺と禰豆子のために……」

『謝らないでよ。私がそうしたいと思って、産屋敷邸に乗り込んだだけだから』



『それで＿＿


そこで寝てる二人……いや、一人と一匹？ 彼らが、炭治郎と一緒に合同任務にあたった隊士達？』

同期の二人→←蝶屋敷へ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す