【鬼滅の刃】鬼殺隊の狐は絆を紡ぐ

傷“口” ページ4

鬼は鋭い爪で、何故か自分の頸に引っ掻き傷をつける。
辺りに鬼の血液が飛び散り、私は後ろに跳んで飛び散る血液を避けた。

何かの血鬼術？
なんで、わざわざ自分の身を傷つけるような真似を……。

私が眉を潜めていると、鬼はヘラヘラとした口調で語り出す。

「先に助言しておいてあげるよ。俺、鬼だけどそこまで強くないんだよね。力もないし、今までずっと持久戦で勝ってきたものだし。血鬼術だって持ってないんだ」

鬼は人差し指を立てると、その指で自分の口を指差す。

「俺にできることといえばね、“食べる”こと。食べて、他の鬼に助けて貰わなきゃ、俺は何もできな」

『全集中。狐の呼吸、壱ノ型 狐火』

素早く間合いを詰め、口が止まらない鬼の頸に向けて刀を振るう。
その速度は、最終選別のときよりも格段に速くなっていた。

これなら、いける……！


『……なっ！？』

「せっかちだなぁ。まだ話してる途中なのに」

私の刀は、鬼の頸を切り落とす前に止められた。
先程彼が傷跡をつけた辺りに出現した＿＿もう一つの口によって。

頸に現れた口は私の刀を硬く噛み締めており、刀を押さえられた私は身動き一つ取れない。

「さぁ、食事の時間だ。残さず食べてあげるからね」

マズい……！

大きく口を開けた鬼の顔が迫ってくる。
しかし今日輪刀を手放したら、次の攻撃に移ることができない。

『……あぁもう！』

私は苛立ちの声を漏らしながら、右足で鬼の顔を蹴り飛ばした。
その衝撃で頸の口は日輪刀を離し、私はすぐさま距離を取って体勢を整える。

「ええぇ……鬼殺隊って、そんな物理攻撃してきちゃうの？」

何も日輪刀だけが、鬼と戦える術じゃない。
最終選別、頭突きで鬼の攻撃を躱した炭治郎が、そう私に教えてくれた。

上手く攻撃に組み込めば、人間の体術だって鬼に通用するのだと。


『……っ！』

こちらに向き直った鬼の左頬には、先程までなかった口が出現していた。

……なるほど。
この鬼は、体の傷ついた箇所に“口”が出現するんだ。
そして頸を斬ろうとした日輪刀を歯で受け止めたように、相手の攻撃を止めてみせる。
となると、最初の自傷行為で頸に口を出現させられたのは、かなりの痛手だ。

こちらが攻撃をすればするほど、傷をつければつけるほど、この鬼は強くなる。
戦いが長引くほど、私は自分の頸を絞めることになる。

速戦即決。
一撃一撃が、頸を斬るつもりで。
格子の奥に囚われた彼女のためにも、早めにかたをつけよう。

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