我慢 ページ30
「禰豆子っ!!」
縁側に駆け寄り、禰豆子ちゃんの名前を呼ぶ炭治郎。
炭治郎のように駆け寄ることはできないが、せめてもの思いで、私も禰豆子ちゃんに呼び掛ける。
『駄目だよ、禰豆子ちゃん……っ! 食らいついちゃ駄目! 人に襲いかかったら駄目!』
禰豆子ちゃんはふぅふぅと荒い呼吸をしながら、傷だらけの人の滴り落ちる血を睨み付け__
「むっ!」
「っ!?」
そっぽを向いて、鬼の本能による衝動を我慢をした。
「ではこれで、禰豆子が人を襲わないことの証明ができたね」
よかった……っ。
「……」
私がほっと息を吐くと、長髪の少年は私に抵抗の意思がなくなったことを悟ったようで、掴んでいた手を離す。
右手を見やると、包帯にはじんわりと血が滲んでいた。
「炭治郎。それでもまだ、禰豆子のことを快く思わない者もいるだろう。証明しなければならない。これから、炭治郎と禰豆子が鬼殺隊として戦えること、役に立てること。
十二鬼月を倒しておいで。そうしたら、皆に認められる。炭治郎の言葉の重みが変わってくる」
「俺は……俺と禰豆子は、鬼舞辻無惨を倒します! 俺と禰豆子が必ず、悲しみの連鎖を断ち切る刃を振るう!!」
「今の炭治郎にはできないから、まずは十二鬼月を一人倒そうね」
お館様に頭を下げていた炭治郎は顔を上げ、声高々に宣言する。
それに対して、お館様はやんわりと炭治郎を諭した。
数人の柱達が肩を震わせて笑いを我慢する中、お館様は私に視線を移して言う。
「Aも、炭治郎と禰豆子を支えてあげてね」
『は、はい!』
「炭治郎の話はこれで終わり。下がっていいよ。そろそろ柱合会議を始めようか」
お館様がそう言うと、蝶の髪飾りをつけた女性が手を上げる。
「でしたら、竈門くんは私の屋敷でお預かり致しましょう」
「それは丁度いい! 蛍原少女、君も蝶屋敷に行ってその手をきちんと手当てしてもらった方がいいだろう!」
『え……っ』
私が左隣に座る煉獄さんを見上げると、煉獄さんはこちらに顔を向けていつものような笑顔を見せる。
「久々の弟弟子達との再会で、積もる話もあるだろう! 柱合会議が終わり次第、蝶屋敷まで迎えに行く。それまで、あの少年達の側にいてやるといい!」
『師匠……、ありがとうございます!』
「はい! 連れていってください!」
蝶の髪飾りをつけた女性が手を叩くと、二人の隠が駆け寄ってきて、一人は炭治郎を、もう一人は禰豆子ちゃんの箱を素早く背負う。
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紅いちご - 続編ですか!!楽しみに待ってますね! (2021年11月6日 22時) (レス) @page41 id: 0ffbfabdee (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからも頑張ってください(๑•̀ㅂ•́)و✧ (2021年11月6日 5時) (レス) @page41 id: 6b2570d7e2 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉いろは(プロフ) - むつき。さん» コメントありがとうございます! 本編でもこの二人の関係性はしんどいので、今後どう夢主ちゃんと絡ませていこうか悩んでいます(苦笑)無限列車が近づいてきて精神が削られていますが、更新頑張っていこうと思います! (2021年11月4日 22時) (レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 冨岡さんと錆兎さんのシーンにめちゃめちゃぐっと来ました(語彙力)更新頑張ってください! (2021年11月3日 18時) (レス) @page38 id: da60582d52 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉いろは(プロフ) - 匿名希望さん» ご指摘ありがとうございます! 本当ですね! 全然気がつきませんでした……ありがとうございます! (2021年10月22日 22時) (レス) @page29 id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅葉いろは | 作成日時:2021年9月22日 15時