守るため ページ22
次々と鋭利な刃物のような言葉が突きつけられる。
何も反論できずに口をつぐんでいると、少年は和風門の方を指差した。
「わかったなら早く帰りなよ」
『それは、できません』
「俺も暇じゃないんだけど」
『私だって暇じゃありません!』
今こうしている内にも、炭治郎や禰豆子ちゃんはあらぬ疑いをかけられて酷い仕打ちを受けているかもしれない。
少年は小さく嘆息し、呆れたように言う。
「頭が悪くて強情って、本当に面倒な子だな」
『っ!?』
次の瞬間。
私の両目は首に迫り来る少年の手を捉え、反射的に数步後ろに飛び退いた。
いきなり手刀って……!
「へぇ、これは避けられるんだ」
『いきなり何するんですかっ!』
「口で言ってもわからないんじゃ、こうするしかないでしょ。俺は抜刀してもいいけど、隊員同士で切り合ったら隊律違反になるし」
少年の動きは並大抵のものではなかった。
全集中・常中を修得していなければ、今の速度にも反応できなかっただろう。
この時点で相当な実力さを感じるが、それでも素直にここを離れるわけにはいかない。
「……救いようがない馬鹿なんだね。それでいったい何をする気なの?」
少年は日輪刀の柄に手を掛けた私を見てそう言った。
勿論、本当に鞘から抜いて戦うつもりなんてない。
勝敗は目に見えているし、そんなことはしたくない。
『質問を質問で返すようで悪いのですが、
__貴方は何のためにその刀を携えているのですか?』
「何を言ってるの? 君は」
『鬼殺隊に入隊する人達は、鬼に対して憎しみを抱いている人がほとんどです。でも、きっとそれだけじゃないはずです。
大切な人を守りたい思い。あるいは、守れなかった後悔。
それらを抱えながら、私達は鬼殺隊に入隊し、日輪刀を手にして、己を鍛え、今日も鬼と戦っています。
日輪刀は、相手の意思を捩じ伏せるための道具じゃない。
誰か、大切な人を守るための刃です。
私の刀も……そして、貴方の刀も』
だから
「……大切な、ひと」
浅葱色の瞳が揺らぎ、小さな光を宿した気がした。
しかし、その僅かな光はすぐにまた失われる。
こちらに飛んできた鴉の声によって。
「無一郎、ソコデ何シテルノ? 他ノ柱達ハモウ集マッテルワヨ!」
「……うん。すぐ行くよ」
『……えっ?』
少年は素早い動きで私を肩に担ぐと、スタスタと歩き出した。
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紅いちご - 続編ですか!!楽しみに待ってますね! (2021年11月6日 22時) (レス) @page41 id: 0ffbfabdee (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからも頑張ってください(๑•̀ㅂ•́)و✧ (2021年11月6日 5時) (レス) @page41 id: 6b2570d7e2 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉いろは(プロフ) - むつき。さん» コメントありがとうございます! 本編でもこの二人の関係性はしんどいので、今後どう夢主ちゃんと絡ませていこうか悩んでいます(苦笑)無限列車が近づいてきて精神が削られていますが、更新頑張っていこうと思います! (2021年11月4日 22時) (レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 冨岡さんと錆兎さんのシーンにめちゃめちゃぐっと来ました(語彙力)更新頑張ってください! (2021年11月3日 18時) (レス) @page38 id: da60582d52 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉いろは(プロフ) - 匿名希望さん» ご指摘ありがとうございます! 本当ですね! 全然気がつきませんでした……ありがとうございます! (2021年10月22日 22時) (レス) @page29 id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅葉いろは | 作成日時:2021年9月22日 15時