自分の立場 ページ21
『……着いたはいいものの、どうしよう』
全集中の呼吸・常中。
それは日々の鍛練でしっかりと身についていたようで、煉獄さんの姿を見失うことなく追いかけることができた。
そして辿り着いた、和風の立派なお屋敷。
煉獄さんは屋敷の前で止まると、和風門の下を潜っていく。
夢中で煉獄さんを追いかけてきた私は、それを見てようやく冷静さを取り戻した。
和風門の前で足を止め、大きな屋敷を見上げる。
ここって、あれだよね。
鬼殺隊の本部、お館様のお屋敷。
一般隊士や隠は、その場所を知ることすらない。
でも、この先に炭治郎と禰豆子ちゃんが……
ごくりと固唾を呑み込み、威厳のある和風門を潜る。
門の外と中で流れる空気が違う気がして、身体を強張らせながら恐る恐る屋敷の側に近づいた。
「起きろ、おい起きるんだ!」
なんだか、庭の方が騒がしいような……。
できる限り気配を消して屋敷の壁に張り付き、庭の方を覗き込もうとしたその時。
「誰?」
『っ!?』
突然真後ろから聞こえた声にびくりと肩を震わせ、素早く振り返る。
そこには、私と同じくらいの背丈の長髪の少年が立っていた。
鬼殺隊の制服に、腰に座した日輪刀。
同じ鬼殺隊士だということはわかるが、何処か私とは違うような……威圧感のようなものを感じる。
「聞いてるんだけど。君、誰? ここで何してるの?」
『あ……私は、蛍原Aと言います』
真っ直ぐな浅葱色の瞳に怯みながら、自分の名前を口にする。
嘘がつけない、ついてはいけないような、ビリピりとした空気を肌で感じた。
『こちらに鬼を連れた隊士がいると聞いて……その隊士に会わせて頂けませんか?』
「……そういえば、そんな話してたっけ」
『お願いします! 彼に……炭治郎と禰豆子ちゃんに会わせてください!』
深く頭を下げて、必死に懇願する。
しかし私に降りかかってきたのは、想像以上に冷たい言葉だった。
「__君さ、自分の立場ってものをちゃんと理解してるの?」
『え……』
背筋がひやりとして、恐る恐る顔を上げる。
少年は先程と変わらない無表情でこちらを見下ろしており、そのまま何の感情も感じられない声色で続ける。
「なんで俺が君のために動かなきゃいけないの? それと、ここが何処だかわかってる? 君みたいな一般隊士が来ていいような場所じゃないんだよ。というか、そもそもどうやってここまで来たわけ?」
『……っ』
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紅いちご - 続編ですか!!楽しみに待ってますね! (2021年11月6日 22時) (レス) @page41 id: 0ffbfabdee (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからも頑張ってください(๑•̀ㅂ•́)و✧ (2021年11月6日 5時) (レス) @page41 id: 6b2570d7e2 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉いろは(プロフ) - むつき。さん» コメントありがとうございます! 本編でもこの二人の関係性はしんどいので、今後どう夢主ちゃんと絡ませていこうか悩んでいます(苦笑)無限列車が近づいてきて精神が削られていますが、更新頑張っていこうと思います! (2021年11月4日 22時) (レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 冨岡さんと錆兎さんのシーンにめちゃめちゃぐっと来ました(語彙力)更新頑張ってください! (2021年11月3日 18時) (レス) @page38 id: da60582d52 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉いろは(プロフ) - 匿名希望さん» ご指摘ありがとうございます! 本当ですね! 全然気がつきませんでした……ありがとうございます! (2021年10月22日 22時) (レス) @page29 id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅葉いろは | 作成日時:2021年9月22日 15時