座敷牢 ページ3
手紙を届けに行く茜を見送った後。
私は目の前の鬱蒼とした山の奥へと突き進み、先日見つけた木造の大きな屋敷の前まで辿り着いた。
『……』
神経を張り巡らせ日輪刀に手をかけたまま、屋敷の中に入っていく。
薄暗い廊下を進むと、見るからに怪しい、地下へと続く階段を発見する。
『……血の臭いがする』
炭治郎ほどの嗅覚を持っていなくてもわかる、強烈な鉄に似た臭い。
駆け足で階段を降りた先には、陰鬱な雰囲気を漂わせた座敷牢が広がっていた。
『っ! 大丈夫ですか!?』
いくつもの座敷牢の中。
格子の奥に一人の人影を捉え、その格子に駆け寄って声をかける。
返事はない。
目を凝らして見ると、壁に寄りかかるようにして座り込んでいる男性は両足を無くしており、着物の下には赤黒い血溜まりができていた。
……間に合わなかった。助けられなかった。
顔をしかめて悪夢のような光景を目に焼き付けていると、不意に隣の座敷牢から掠れた声が聞こえてくる。
「……だ、だれ?」
『っ!』
反射的に声のした方を振り向くと、そこには私と同じくらいの背丈の女の子が閉じ込められていた。
赤く腫れた弱々しい瞳が私を見上げ、彼女は怯えながらも格子を掴み、こちらに身を寄せる。
「に、人間……?」
『はい。鬼殺隊の蛍原Aです。誘われた人達を助けにきました』
「鬼殺、隊……?」
首を傾げる彼女を怖がらせないように、柔らかく微笑んで頷く。
すると、彼女はまじまじとこちらを見つめる。
「……今、蛍原Aって言った?」
『え?』
彼女の問いかけに首を傾げた、そのとき。
「あれぇ? 俺の食糧庫に鼠が入り込んでる」
『!』
背後から聞こえた、私とも彼女とも異なる低い声。
振り返ると同時に日輪刀を構えると、そこには薄ら笑いを浮かべた青年が立っていた。
彼の気配は__鬼だ。
「困るよ、勝手なことされちゃ。あぁでも、鬼殺隊員を食べたとなれば、また十二鬼月に戻れるかな?」
チカチカと天井の照明が点滅する。
その明かりは、バツ印が刻まれた彼の右目を照らした。
バツ印の下に浮き出ているのは、“下陸”の文字。
……運がいいのか、悪いのか。
『まさか、初任務で元十二鬼月を相手にするとはね』
「初任務? ってことは君、柱じゃないんだ。残念。柱くらいの人間を喰わないと、あの方に目をかけてもらえないよ」
「……まぁ、君を食べれば応援が来て、そいつらも喰い尽くせば、いつかは柱のほうが来てくれるよね?」
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紅いちご - 続編ですか!!楽しみに待ってますね! (2021年11月6日 22時) (レス) @page41 id: 0ffbfabdee (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからも頑張ってください(๑•̀ㅂ•́)و✧ (2021年11月6日 5時) (レス) @page41 id: 6b2570d7e2 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉いろは(プロフ) - むつき。さん» コメントありがとうございます! 本編でもこの二人の関係性はしんどいので、今後どう夢主ちゃんと絡ませていこうか悩んでいます(苦笑)無限列車が近づいてきて精神が削られていますが、更新頑張っていこうと思います! (2021年11月4日 22時) (レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 冨岡さんと錆兎さんのシーンにめちゃめちゃぐっと来ました(語彙力)更新頑張ってください! (2021年11月3日 18時) (レス) @page38 id: da60582d52 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉いろは(プロフ) - 匿名希望さん» ご指摘ありがとうございます! 本当ですね! 全然気がつきませんでした……ありがとうございます! (2021年10月22日 22時) (レス) @page29 id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅葉いろは | 作成日時:2021年9月22日 15時