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高熱の夜 ページ17

確認するように名前を呼ぶと、沙代は目を潤ませてこちらに飛びついてくる。

「A姉っ!」

「ワッ、危ナイデスゥ!」

咄嗟に私の膝から横に飛び降りた茜が文句を溢す中、私は戸惑いながら沙代の背中な腕を回す。

……沙代、沙代だ。
あのお寺で、いつも私に甘えていた最年少の小さい女の子。

私と同い年くらいまで大きくなっているから、全然気がつかなかった。

そうか。
当たり前だけど、私が眠っていた五年の間も、沙代はすくすくと成長していたんだ。
ずっと年下の妹のように思っていたけど、いつの間にか、背丈も何もかも沙代に追いつかれていたらしい。

身体を震わせて時折スンと鼻を鳴らす沙代を、強く抱き締め返す。

『……よかった。沙代が生きてて、本当によかった……っ!』

ぽろぽろと、熱い涙が頬を伝って流れ落ちていく。

その後お茶を運んできた千寿郎くんが困惑してしまうほど、私達は互いの存在を確認するように抱き締め合いながら、声を上げて泣き続けた。



「それじゃあA姉は、毎晩あんな化物と、命がけで戦ってるんだね」

『うん』

「……やっぱり、“あの日”のことが鬼狩りを始めたきっかけ?」

『それだけが理由じゃないけど……まぁ、多少は引きずってる部分もあるのかもね』

沙代がいつの日を指しているのかは、すぐにわかった。
湯呑みの水面に反射して映る沈んだ顔の自分を見下ろしながら、あの忌々しい夜のことを思い出す。



__その日、私は高熱に魘されて布団に横になっていた。


先生は朝からずっと私の看病に当たってくれて、子供たちも「早く元気になってね」と見舞いの木の実や花、折り紙などをくれた。

「何やってんだよ、A姉」

『あはは、ごめんね……。駒遊びはまた今度やろうね。獪岳』


夕方くらいだっただろうか。
先生が私のために氷や薬を買いに出掛けているとき。

「Aねぇ……」

『沙代……? どうか、したの?』

「か、かいがくが、お金……お寺のおさいせん箱から、お金をぬすんで……」

『え……っ?』

「皆が、今夜、かいがくを追い出そうって……話してて……」

『ま、待って。そんなはずない、きっと何かの間違いだよ。獪岳はそんなことする子じゃない……うっ』

「Aねぇ!」

無理に立ち上がろうとすると、激しい頭痛と目眩に襲われた。
そのため獪岳に話を聞きに行くことも、皆を止めることもできなくて。

先生が持ってきた薬の副作用で私は睡魔に襲われ、気がつけば夜を迎えていた。

命乞いした子供→←客人



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紅いちご - 続編ですか!!楽しみに待ってますね! (2021年11月6日 22時) (レス) @page41 id: 0ffbfabdee (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからも頑張ってください(๑•̀ㅂ•́)و✧ (2021年11月6日 5時) (レス) @page41 id: 6b2570d7e2 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉いろは(プロフ) - むつき。さん» コメントありがとうございます! 本編でもこの二人の関係性はしんどいので、今後どう夢主ちゃんと絡ませていこうか悩んでいます(苦笑)無限列車が近づいてきて精神が削られていますが、更新頑張っていこうと思います! (2021年11月4日 22時) (レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 冨岡さんと錆兎さんのシーンにめちゃめちゃぐっと来ました(語彙力)更新頑張ってください! (2021年11月3日 18時) (レス) @page38 id: da60582d52 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉いろは(プロフ) - 匿名希望さん» ご指摘ありがとうございます! 本当ですね! 全然気がつきませんでした……ありがとうございます! (2021年10月22日 22時) (レス) @page29 id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅葉いろは | 作成日時:2021年9月22日 15時

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