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生きるも死ぬも次の元帥次第。
綺麗にお辞儀をして、ドアを開きその場を後にした。
……恐ろしいくらいの気迫の男を、誰一人として止めることは出来なかった。
あれだけの王の素質を持ち合わせても尚、使える側としての振る舞い。それほどの実力を持ち合わせている騎士王の存在にも少々の恐怖を感じる。
ただひたすらに沈黙を貫く会議室から、次々と人が抜けていった。
1人息を吐いて自室で書類仕事へと励む。
…頭に浮かぶ事はサカズキ伯父貴とクザン兄貴の決闘のことばかり。
あの時、嫌だって言えたら、決闘は免れたのだろうか。
…いや、不可だ。あれほどの大きな歯車、俺くらいが何とかしようとしたって、どうにもならない。
……犠牲無くして勝利なし。犠牲無くして、正義は成されぬ。そんなこと、海軍になる前。騎士王に仕えていた頃から分かっていた。
ただ、俺が願うのは、誰も死なないことだ。無傷で平和的解決が出来ればそれは最善だ。だが、とりあえず命を取り留めてくれるだけでも十分だ。
円卓の騎士達の死は当時こそ苦しかったものの、現在ではもうその感情は揉み消えている。
…しかし、死んでしまえば二度と会うことの無いだろうこの世界の住民に、死んで欲しくはない。という感情だけが俺に作用していた。
カチカチと時を刻む時計を見上げる。
……さて、そろそろコビー君とヘルメッポ君の所に顔を出して、稽古をつけてあげないと。
そう思い、急ぎの書類を全て終わらせ、椅子の背もたれにかけておいたコートを手に部屋から立ち去る。
『…あの時コビー君は見聞色の覇気の暴走によって気を取り乱していたんだろう。俺も同じものを見ていたよ。』
コビー「あの時はAさんに救われました。」
『いや、コビー君の言い分は正しいものだったし、俺はただ知ってる人に死んで欲しくないだけ。
…ごめんね。あの時言ったこと。コビー君はいい海兵になるよ。』
そう頭を下げれば、コビー君は慌てて頭を上げて欲しいと懇願する。
…コビー君の精神の強さは、このなよなよした感じからは到底計り知れないものがある。
『…今日は覇気についてのおさらいをしようか。』
そう言って、コビー君とヘルメッポ君に淡々と説明を始めた。
…2人とも俺が少し元気ないの気にしてるみたいだけれど、特に何も口に出すことはなく終了した。
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作者名:みるつき | 作成日時:2022年9月27日 7時