〇 ページ41
どかっと椅子に座るスモーカーに、男は不躾にそう話しかける。スモーカーはというと、白い息を吐いて不敵に笑い、
スモーカー「持っていきゃいいだろ。」
と、告げた。
その言葉に男は一時停止した後、瞬きをしてスモーカーに向かって歩き始める。
すぅっと男は息を吸いながらスモーカーの葉巻に自らの煙草を近づける。
…しかしなかなかつかない。息が合わないのだ。
何度も息を吸って、何度も煙草に火を移そうとするが、向こうが吐くタイミングで、なかなか火をつけることが適わない。
『…意地悪しないでくれないか。』
スモーカー「俺が合わせる義理はねェ。」
眉をひそめつつ煙草と葉巻の先をくっつけては吸うを繰り返す。
…火がやっとついた。そうすれば男は、得意げな表情を浮かべ、口の端を吊り上げながら紫煙を燻らせる。
スモーカー「…そのままのテメェでも、いい顔をする。」
スモーカーは満足気に笑い、煙を深く吐いた。
男は、それを聞いてか聞かずか。スモーカーの座る椅子の肘掛に腰を下ろす。
『…スモーカーさんは昔から…意地は悪かったが、いい人だったよ。今もいい人だ。
まぁ、煙草の趣味なんかは合わないがな。』
そう言って愉快そうに笑い、男は何か思い出すように目を閉じる。
『…そろそろ時間だな。たしぎちゃんが薬を持って慌ただしくこの部屋の前を通るだろう。』
スモーカー「じゃあ、その姿のお前ともお別れって訳だな。」
そうスモーカーが告げると、男は頬をかきながら少し視線を上にあげる。
『…まぁ、お別れっていうか…俺は未来であって…なんて言ったらいいか。
……まぁ、しばらくは会えないな。また会うとしたら30年後の未来だ。』
スモーカー「くたばってねぇといいがな。」
そんな軽口に男は「シャレにならない」と笑いながら扉の方へ振り返らずに歩いていく。
たしぎ「Aさーーん!!居られますかー!!!」
スモーカー「……ったく、騒がしいなアイツの周りは…」
スモーカーは、煙を吐いて短くなった葉巻を灰皿にそっと置く。そして、その煙に紛れるかのようにその場から姿を消した。
109人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みるつき | 作成日時:2022年9月27日 7時