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黄猿は男に近づいて姿をまじまじ見た後、「Aくんだねぇ」と呟く。
黄猿はその男に次々と事の経緯を説明する。
どうやら手土産に持ってきた菓子に何らかの薬が混入してたらしい。元手のお菓子屋さんはマッドサイエンティストの経営する店で、今回はその科学者の気まぐれで薬が入っていたらしい。
…そんな気まぐれがあっていいものか。と思いつつも男は「なるほどね。」とだけ呟いていた。
原因などは知っていたのだろうが、経緯までは知らなかったようだ。
ボルサリーノ「店はもう潰しておいたからねェ。不便をかけるけれど、数時間はそのままでいてもらうよォ。」
『…構わない、ッス…よ?構わないですよ、?………構いません、ボルサリーノ、さん?伯父貴?』
言葉の節毎に疑問符のつくちぐはぐな喋りをするAに黄猿は笑い出す。
…男は現在56。つまるところ大将黄猿と同い年なのだ。本来普通に生きていれば年齢差が縮まることなどないため、どう呼ぶのが正解かと模索しているようだ。
ボルサリーノ「とりあえず、Aくんを借りていくねェ。」
そう言って連れ去られていく男と大将を、何が起こったのかという顔でたしぎは立ち尽くしていた。
たしぎ「…にしても、スモーカーさんよく分かりましたね!」
その言葉の何に気が触れたのか、スモーカーは険しい表情を浮かべて、立ち去っていった。
『い、いきなりテレポートはないじゃないか〜!!』
「騒がしい!!何をしとるんじゃ!!!」
そんな声にピシッと2人とも声を上げた本人の方へと向く。
赤犬がお冠なのだ。
クザン「誰?その人…」
ボルサリーノ「さっき言ってたAくんだよぉ。遅かったみたいだがねぇ。」
その名前を聞いて両者顔を上げる。
メガネを上げてヘラりと笑う50代後半程の男に2人は絶句。という様子だった。
クザン「えぇ〜ッ!!!??Aちゃん!?が、コレ!?!?」
『…そうだが、悪いかな。』
青キジはその言葉に何も言えなくなり、椅子に座り直す。
30年後の記憶も保持したまま老けさせる…当人からすれば戻されるだなんて、結構な技術力ではある。
煙草をくわえて、ジッポライターで火をつけた男をじっと見つめる。
…確かに髪の色や、背丈、傷跡、声なんかも当人そのものだ。
『…ここは禁煙だったか…』
熱烈な視線にそう口を開く男に、黄猿は大丈夫だと一言告げる。
…一言も交わさない静寂の時だけが流れる。
居づらそうにする男に一言、疑問が降りかかる。
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作者名:みるつき | 作成日時:2022年9月27日 7時