特殊スキル［集中］のみで目指す魔王城【オリジナル】

ずっと一緒に ページ46

国民の前での報告が終わり、A達はエルに宛てがわれたあの別荘に戻ってきた。随分居なかったのに部屋が綺麗だったのはメイドさんのお陰らしい。ありがとうメイドさん。

｢さて。明日は騎士団へ行くよ。私はハルのいる教会に行くからついていけないけど団長に話は通してあるし、少しの間はクルシュもいるから安心して。･･････まあ、Aなら大丈夫だろう｣

そう言ってエルはAの後ろに目を向けた。

別荘の階段を下りてこちらへ来るのは――――――ファルだった。

｢おかえり、A。どうだった？｣

あの時。決断を迫られた時。Aは魔界よりレンドルア王国を選んだ。よく分からない事は怖いことだ。だからAは何も知らない魔界や魔族を選べなかった。
ファルの事はファル自身に任せた。ヴァステリスは『どちらにせよ上手く説明してやるからのぉ』、と優しい声をかけてくれた。どうしてこんなに優しいのか、Aには分からなかった。
ファルが選んだのは、Aと同じレンドルア王国へ行くこと。次期魔王に楯突いた時点でこの魔界に残らない覚悟は決めていたらしい。｢･･････本当にいいの？｣と聞くと、｢俺はAがいない世界だと、息が出来ないから｣と頭を撫でられた。
正直、一緒にいられるのは嬉しい。未だにこの世界の分からないことが多いから。

｢ファルただいま！すごく緊張してたけど、まぁ僕立ってるだけだったからね｣

駆け寄れば自然に腰が抱き寄せられてファルと密着する。最近ファルは抱き寄せることが多くなった。ファル曰く"マウント"らしいけど、何に対してのマウントなのかは分からない。多分ファルだから大丈夫だろう。

｢ファル、Aのことをよろしくね｣

｢フン、お前に言われなくてもAは俺が守る｣

明日はファルも一緒に騎士団へ行き入隊することが決まっている。ファルが一緒なら心強い。




｢大丈夫だ、A。俺はずっとAの隣にいる。龍は一筋なんだ。俺がずっと一緒にいて、Aを守ってやるからな｣





髪にキスをされても｢もー、ファルったら｣と言うだけで咎めもしないAを見て、エルは思う。
彼はもうファルの檻から抜け出せないだろう、と。
そこからAを取り上げるのもいいし、ファル達がどうなっていくか見守るのも楽しそうだ。
ああ、嗚呼、本当に君達(おもちゃ)は面白い！！

エルはにっこりと嬉しそうに笑って、平和で豊かで思い通りになるレンドルア王国の未来に思いを馳せた。

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