73冊目 ページ34
朝。今日は二人とも遅く起きた。と言うのも、Aの腰が鉛と化していたからだ。湊は元気だがより長く時間を共有したかったので起きずにずっとAとイチャイチャしていた。
「本当に大丈夫?カラダ、痛くない?」
「大丈夫ですよ」
あの時の言葉通り、湊は入念に準備をして痛くならないように細心の注意を払い、さらにはどろどろに気持ち良くしてくれた。
昨夜のことを思い出しAの顔が赤くなる。あれで初めてとか嘘なんじゃないだろうか。いや誰かとしていたら嫉妬してしまうけども。
簡単な朝食を作り食べ終わると支度をする。先ほどベッドの上で話した場所に行くためだ。
電車に乗りバスに乗り少し歩き、着いたのは県総合病院。湊の父がいる病棟だ。
「驚いたよ。あの動画、わざわざ編集長と一緒に会いに行って撮ったなんて」
Aは湊に微笑んだ。
「ちゃんと仲直りできた記念にもなると思って。断られるかもとも思ったけど、湊さんのこと大切にしてる気持ちがよく伝わったよ」
会ったばかりの人にも伝わるほど溢れているのか。何と言うか、嬉し恥ずかしい。
「良かった」
それだけでいろいろと考えていることが伝わったようでAはにこりと笑顔を向けた。
病室に着きノックをする。すぐに「どうぞ」と声がした。昨日聞いたばかりの声だ。
「父さん、久しぶり」
「信彦さん、お久しぶりです」
驚いた顔をした信彦は次第に口許に笑みを浮かべた。何もかも見透かしているような顔だ。
「いらっしゃい。まさか二人で来るとは思ってなかったよ」
「突然の訪問、すみません」
「大丈夫だよ」
それから湊に顔を向ける。
「1日遅れたが誕生日おめでとう。ビデオはちゃんと見れたか」
「うん。その……ありがとう」
目を見て言うのが恥ずかしくて逸らしてしまったが、十分な進歩だと思ってほしい。
「あと、今日は伝えたいことがあって来た」
湊はぐいっとAを抱き寄せた。
「大切な人が出来たから、もう心配いらないよ」
何とまあ盛大なカミングアウトだ。Aは慌てた。BL小説は良くても自分の息子がなるのは少々訳が違うのではないか。
「分かっているよ。そうだと思っていた。湊のために一生懸命になってくれるいい子じゃないか。大事にしてあげなさい」
どうやらビデオ撮影の時点でAの想い人が湊だと気付かれていたらしい。恐ろしい観察眼だ。
「もちろん」
言われるまでもない、と湊はAの髪にキスをした。
701人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
埋夜冬(プロフ) - 白澤 晴夜さん» ありがとうございます!返信遅れてごめんなさい!キュンキュン出来ていたなら良かったです(*´ω`*) (2019年12月14日 13時) (レス) id: 87a5a46f37 (このIDを非表示/違反報告)
白澤 晴夜(プロフ) - 完結おめでとうございます!!もう最後までキュンキュンしながら読ませて頂きました〜!!この2人には、これからも永遠に幸せでいて欲しいです!!これからも頑張ってください!応援してます! (2019年12月13日 22時) (レス) id: 5742d2c832 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ゼロさん» 返信遅くなりすみません!ドキドキしていただけたなら作者も満足です!次回作もよろしくお願いします! (2019年12月7日 10時) (レス) id: b51b60f8c3 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 唳桜さん» 返信遅くなりすみません!可愛く書けていたなら良かったです!次回作も作ったのでぜひ読んでみてくださいね!この作品を読んでいただきありがとうございました! (2019年12月7日 10時) (レス) id: b51b60f8c3 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロ - とても面白かったです。僕自身とても好きなジャンルで読んでてとてもドキドキしました!完結おめでとうございます。これからも応援しています。頑張って下さい(^▽^)/ (2019年12月1日 11時) (レス) id: aaae856515 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年8月10日 22時