54冊目 ページ15
凛音に相談に乗ってもらった次の日、今日も朝からAは出版社に行った。
昨日なんかAは帰ってきてからとても笑顔だった。「嘉川先生とあんなにお話できるなんて」とニヤニヤ状態だ。すごく胸がモヤモヤした。やはり一度嘉川と話しておくべきだな、と感じた湊だがまだ一歩を踏み出せないでいる。
だって湊よりも有名で作家歴も長い天才だ。Aのためなら不思議と力が湧いてくる湊だが、今回はさすがに緊張せずにはいられない。
愛川に電話して話の場を設けてもらおうか。それなら何となく出来る気がしてきた。よし、やるぞ。まずは携帯を持つところからだ。
と、携帯を持とうとした瞬間電話が鳴る。
「愛川さん……」
ディスプレイには『愛川編集長』の文字。心を読んだかのようにタイムリーだ。
「もしもし」
〔九条先生!少々危険な状況になりました…!〕
ただならぬ様子に湊の表情も変わる。危険な状況とはどうしたのか。自分の小説に何か問題が!?
「どうしたの?」
〔嘉川先生が仕掛けてきました。このままだと時ヶ瀬くんが取られてしまうかもしれません〕
「ッ―――――――――!!?」
思わずガタッと立ち上がる。
次の言葉を発するのに時間が掛かった。
「……どういうこと?」
自分から出たその声は震えていた。
〔嘉川先生が、ご自分の編集者をクビにしたんです。編集者は『新しい子を編集者にするから来なくても大丈夫だって2週間ぐらい前に言われたんです。だから今日から行かなくていいんですよね?』と言っていまして……。ですがこちらは新しい編集者の話は何もしてないんです。その編集者にも、嘉川先生にも〕
「……そんなときに、Aが嘉川先生と話に出掛けた」
〔そういうことです〕
何てことだ。恐れていたことがついに起きてしまった。凛音が言った通り嘉川は行動に移したら早い。2週間程前からなんて、Aに初めて会ったときから自分の編集者にする気満々ではないか。
「Aは!?出版社で話してる?」
〔いえ、外です。カフェとしか聞いてなくて、どこのカフェで話しているかまでは……〕
「っ、わかった」
挨拶をして電話を切る。
どうしよう、どうしたらいいんだ。このままだとAが取られてしまう。それは嫌だ。だが自分に出来ることなんて――――――。
そこで凛音の言葉が浮かぶ。
『動け!』『取られたくないならその嘉川ってやつと話してこい!!』
顔を上げた湊は財布と携帯をポケットに詰め家を飛び出した。
701人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
埋夜冬(プロフ) - 白澤 晴夜さん» ありがとうございます!返信遅れてごめんなさい!キュンキュン出来ていたなら良かったです(*´ω`*) (2019年12月14日 13時) (レス) id: 87a5a46f37 (このIDを非表示/違反報告)
白澤 晴夜(プロフ) - 完結おめでとうございます!!もう最後までキュンキュンしながら読ませて頂きました〜!!この2人には、これからも永遠に幸せでいて欲しいです!!これからも頑張ってください!応援してます! (2019年12月13日 22時) (レス) id: 5742d2c832 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ゼロさん» 返信遅くなりすみません!ドキドキしていただけたなら作者も満足です!次回作もよろしくお願いします! (2019年12月7日 10時) (レス) id: b51b60f8c3 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 唳桜さん» 返信遅くなりすみません!可愛く書けていたなら良かったです!次回作も作ったのでぜひ読んでみてくださいね!この作品を読んでいただきありがとうございました! (2019年12月7日 10時) (レス) id: b51b60f8c3 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロ - とても面白かったです。僕自身とても好きなジャンルで読んでてとてもドキドキしました!完結おめでとうございます。これからも応援しています。頑張って下さい(^▽^)/ (2019年12月1日 11時) (レス) id: aaae856515 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年8月10日 22時