第5.27話 結界の中へ ページ28
都和子先生は抱いていた私を岩のかげに横たえた。
「タイ、悠久の玉をあなた一人で扱うのは危ないわ」
タイ兄に近づこうとするものの、五メートルほど近づいた所で
都和子先生は見えない壁にあたったかのように
進むことが出来なくなった。
タイ兄の張った結界のせいだ。
『俺を見くびるな』
「タイ、止めて。貴方が心配なの」
『ヘタな芝居は止めろ。俺の事を捨てたくせに』
「何を言ってるの。思い違いをしているわ!」
『そんな事、今更どうでもいいけどな』
タイ兄は吐き捨てるように言った後、
悠久の玉に向かって右手をかざした。
その途端、悠久の玉が炎のように赤く光りながら、
タイ兄の周りをまわりだす。
「いけない、タイ。手を下ろしなさい」
タイ兄は知らないふり。
「あの結界の中に入ることが出来れば……」
都和子先生は膝まずくと、
スネリに向かって言う。
「スネリ、お願い。貴女の妖力で
私達をあの結界の中へと飛ばしてちょうだい」
「そんな! 無理です。私にはそこまでの妖力はありません!」
「いいえ。貴女ともっけならAを守れる。それだけの
妖力を持っているからこそ、ペンダントを託されたのよ」
「……。わかりました」
そして、スネリが見えない霧の姿になった途端
ビ────ン
と、空気を振動させる漢字が伝わり、都和子先生の足が浮き上がった。
「タイの左肩後方。あのあたりの結界が薄くなっています」
足元からスネリの声がした。
「目を閉じてください。行きます!」
言い終わるや、都和子先生の耳元で爆発音がした。
目を瞑った都和子先生は、体に強い風を受け吹き飛ばされた。
背負った私を右手で支え、もっけを左手で抱き寄せたまま、
都和子先生はタイ兄の結界の中に吸い込まれていった。
第5.28話 過酷な生活の日々 祝150個目→←第5.26話 悠久の玉 〜現れ〜
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作者名:フェイル | 作成日時:2010年12月8日 21時