妖界ナビ・ルナ～私は伝説の子～part５ (ページ20)

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第５.１９話　妖界へ返す事ページ20

それでも、すぐにもっけがカザンに飛びかかって行った。

「Aはタイを止めてくれ」

そう言って、カザンの喉元目がけて、一直線に飛んでいく。

グエッ!

もっけのくちばしが、カザンの喉元に命中しカザンが倒れた。

倒れたのも一瞬、カザンはすぐに起きあがりざま
もっけの腹にかぶりついた。

「もっけ!」

尚も襲おうとするカザンの前に出るや、私はもっけを抱き起こす。

カザンは喉から血を滴り落としながら
鼻の頭にしわを寄せ、おそろしい形相でにらみつける。

『カザン、ストップだ』

タイ兄の声に、カザンは耳をねかせ地面に横たわった。

カザンにとっても、もっけから受けた傷は
致命的なものになっていたのだ。

「もっけ、もっけ!」

私の呼びかけに、もっけは片目を薄く開けた。
それが精一杯のようだった。

『A、スネリ、もっけと、三人ともカザンに噛まれたな。
毒がまわるのに、そんなに時間はかからない』

タイ兄の言葉通り、私の右腕は焼けつくような痛みから
痺れに変わって、もう腕をあげる事すら難しくなった。

このままでは、印を結ぶ事が出来ない。

「スネリ……」

倒れてしまう前に、スネリの元へよろよろと歩くと
血に染まったスネリを抱きかかえた。

「スネリ、しっかりして」

でも、スネリもぐったりしたまま。
呼吸も浅く、今にも死んでしまいそうだった。

『スネリともっけを助ける方法は一つだ。』

タイ兄がそう言うと、私に近付き、正面から向き合った。

『妖界へ返す事。死ぬ前に返してやれば、命は永らえる』